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9: 名無し百物語 2014/08/02(土) 19:21:19.01 ID:Lf31VVEF.net
「タルパ」 

自分は現在25の男なんだが、18~23の間ずっと引きこもってたんだ。 
対人恐怖症が引きこもった主な理由だったんだけど、当時は人と関わるのが怖くて怖くて辛かった。 
引きこもってる間はずっと家にいた。大抵PC使ってネトゲやら2chやったりで時間潰してたんだけど 
暇つぶしってのは暇は潰れるけどなにか積み重なっていくものじゃないだろ? 

だから延々暇つぶしを続けていつ俺は社会に出られるようになるんだと憤りを感じ始めていた。 
そんなとき、たまたま2chのまとめサイトでみたタルパに興味を抱いた。 
スレのタイトルはタルパを作ったら人生変わったとかなんとか、そういう感じのやつだ。 
スレの情報によると、タルパというのはチベット密教の奥義で、訓練を積み重ねることによって 
生き物を生み出すことらしい。 

その生き物には実体がない。触ることはできないが自分にだけはっきり見ることができ、 
独自の意志をもってこちらに話しかけてくる。生き物の性別、性格、見た目なんかは 
自分の好きなように設定することができる。気の合う親友を作るもよし、好みの女の子を 
作るもよし。好きなアイドルや芸能人そっくりにだってできる。 

本当なら最高だろう。だが都合がよすぎるし、まったく科学的じゃない。こんなものに 
ひっかかってたまるか。はじめはそう思った。しかし興味本位でタルパについて調べていくと 
詳しいやりかたが記載された専用サイトがあったり、2chのタルパスレには連日連夜 
タルパを生み出すことに成功した人々の書き込みがあふれている。 
ここまで大人数で嘘をついたりするだろうか?そもそもタルパって何百年も前から 
チベット密教で語り継がれてきたもの。何百年も嘘をつきつづけて何の得がある? 
やり方を見る限り金銭を要求されることなんてまったくないし。 

気づくと俺はタルパが本物であるという答えにたどり着くこと前提の推理を繰り返していた。 
タルパのもたらす希望が、タルパを否定する意見すべてを抹消した。 
もうタルパしかない。タルパで最高のパートナーを作って、応援してもらったり励ましてもらったり 
相談にのってもらったりして、コミュ力をあげて社会復帰するんだ。 
もちろんパートナーはすげーかわいい容姿の女の子にして、夜な夜なムフフなことも・・・! 
夢はどんどん膨らんでいった。俺の妄想力とほぼ無限にある暇な時間は、 

タルパを作るうえでとても有利に働いてくれた。はじめに生み出したいタルパの 
容姿や性格をこと細かく設定して絵にした。年齢は19、痩せ型で巨乳、髪は前髪パッツンの 
ツインテール、名前はミサト。性格は普段ツンツン、ときよりデレるいわゆるツンデレ。 
次に日に何度かミサトに話しかけ、どう返答してくるかを想像した。ミサトだったら何を考え 
どう発言するだろうか。何度も何度も繰り返していくうちにやがて妄想上の人間に魂が宿るという。 

そして暗い部屋の空間に妄想の人間を視覚的に出現させる訓練を繰り返す。途方もない時間を 
訓練に費やしていくうちにハッきりと見えるようになってくる。そしたら話しかけるのだ。 
最初は途切れがちな会話かもしれない。だがそれも繰り返していくうちにちゃんとやりとりできてくる。 
いつでもどんな状況でも、視界の中にタルパが存在し、こちらに話しかけてくるようになれば完成だ。 

多くの人は、タルパを作る訓練の過酷さに挫折しあきらめてしまう。だが俺は違った。 
自分で言うのもなんだが俺はもともとできる子だったのだ。対人恐怖症になる前はクラスで1,2を 
争うほどの成績をおさめていた。小、中、高全部においてだ。つまり集中力と継続力は人並み以上 
なのだ。そんな俺が作れないわけがない。俺は自分を信じきっていた。必ずできると。 

そのおかげなのか、訓練を開始して一ヶ月が経った頃、ミサトはおぼろげながら具現化していた。 
まだ集中が途切れるとすぐに消えてしまうのだが、ちゃんと見えるし話しかけてくる。 
ミサトが具現化したとき、俺は数年ぶりに泣いた。これで救われる。もう一人じゃないって。 
ミサトの初めての言葉は「べ、べつに早く一緒になりたいなんて思ってないんだからね!!」だった。