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22: 前項「タルパ」とは別人 2014/09/06(土) 10:08:35.54 ID:k/w/KYuo.net
『タルパ2 アイ・シー・ユー』 


 タルパに関する情報収集を始めると、報告が(予想以上に)希少な事に焦った。重複も多い。まあ、当然っちゃ当然か。実体のないおしゃべり野郎、ストーカー女を生涯頭の中に住まわせるような事態を自ら望む者はそうはいない。 
 それでも世界には救助の当てが潰えたロビンソン・クルーソーの如き境遇に陥る人間、孤独は存在し、彼らの一部は、その伝聞は貴重な情報を俺にもたらしてくれた。 
 俺はある理由から遅くとも半年後には妖精だか背後霊だか良性のコブだか時限爆弾だかタルパだかを慰めとする環境に置かれるのを了解していた。 

 俺が得た知見、実践した製造法を簡潔に記す。 
 一、タルパは術者が一心不乱に思い描いた造形、機能で出現する。 
 二、実体は伴わない――はずだが、水を満たしたグラスを掲げたという事例があり、 またその声や衣擦れが第三者の耳に届いたという報告も少なくない。 
 三、死だけが二人を分かつ。術者の死と同時ではなく、死後に消滅する。 

 モデルは女優のF。雛型があると集中しやすい。俺は部屋中に彼女の写真を貼り、様々な彼女の出演場面(勿論本人のみ)を編集した動画を作成し、セリフを消してリピート再生させた。外枠はこれで充分、内装が難問なのだ。 
 プログラム(エートス?)の設定限度は三個とされている。だが世俗の身では一つ授けるのがせいぜい。集中力が続かないのだ。たった一つでも複雑な注文は手に余る。安全弁も兼ね「俺の命令に服従する」とした。これでも長い。 
「素直」はどうだ?――大雑把すぎる。タルパ自身の欲望に「素直」かもしれぬではないか。そこで「従順」という言葉が浮かんだ。これは良い。「オレニジュウジュン」をマントラに俺は伝説を再現する作業に没入した。 
 ひとえに集中力。だらだらやっても駄目で、九十日を過ぎると築いた土台が崩壊というか霧消してしまい、最初かららやり直しになるとの由。調べた限りでは平均所要期間は一ヶ月弱、俺のタルパは三十四日目に誕生した。 

 ルックスは申し分なかった。頭がやや大きく、首がやや短いが、これは視点を顔立ちに固めすぎた結果だろう。同じ理由からかタルパ――Fは裸身であった。首から下、衣装のことなどすっかり失念していた。まあ後でどうにかなるだろう。 
 もう一つ失念していたのは声色。消音していた為に女優のFとは似ても似つかぬ低い声、しわがれ声だった。裏声を試みさせたが、びくついた猫のような音色が漏れたのですぐにやめさせた。まあそのうち慣れるだろう。慣れなきゃしょうがない。 
(続く)