1: ニカワ ★ 2016/08/27(土) 23:39:49.65 ID:CAP_USER9.net
頬に線で「矢羽根」が刻まれている両面埴輪の一方の顔=和歌山市岩橋の和歌山県立紀伊風土記の丘で、八重樫裕一撮影
no title

両面埴輪のもう一つの顔には「矢尻」が線で描かれている=和歌山市岩橋の和歌山県立紀伊風土記の丘で、八重樫裕一撮影
no title

側面から見た両面埴輪=和歌山市岩橋の和歌山県立紀伊風土記の丘で、八重樫裕一撮影
no title

両面埴輪などが出土した大日山35号墳の西造出(つくりだし)=2006年1月、和歌山県立紀伊風土記の丘提供
no title


 約10年前、和歌山市の古墳から一つの頭に二つの顔がある「両面人物埴輪(はにわ)」が見つかった。全国初の埴輪で、その後も類例はないという。両面の顔に込められた意味とは何なのか。

 阪和自動車道和歌山インターチェンジ(IC)に近い、国特別史跡・岩橋(いわせ)千塚古墳群内の大日山35号墳(6世紀前半)から出土。2005年度調査で頭部が見つかり、和歌山県教委が発表、06年12月2日の各紙朝刊をにぎわした。毎日新聞は鏡に一方を映して二つの顔を1枚に収めた写真を掲載した。

 私事だが当時、和歌山支局のデスク。「妙なもんが出たなあ」と妙に記憶に残っている。その意味については専門家の見方もさまざまで、当然確定的ではなかった。「研究が進んで分かったことはないのだろうか」と期待しつつ、展示している県立紀伊風土記の丘を訪ね、初めて実物と対面したのだが……。

 「両面の必要性や意味は今も分かりません」と、風土記の丘学芸員の山本光俊さん。残念ながら10年前と変わっていなかった。高さ約19センチ、幅約14センチ。破片をつなぎ合わせた復元は、樹脂で補った部分が意外に少ない。髪を結い下ろした「美豆良(みずら)」が両側面に一つずつあり、頭を共有している。

 一方の顔は、左右の頬に「矢羽根」を表す線が刻まれ、目などからは穏やかな印象を受ける。もう一つの顔の両頬の線刻は「矢尻」を表し、つり目で上唇の中央に切り込みもあり、険しい顔つきに感じる。表情は対照的だ。当時、発掘や埴輪の整理に関わった県教委文化遺産課主査の丹野拓さんは「顔に線刻がある埴輪の破片が2体分あるのだろうと接合してもらっていたら、『くっついた』と言われ、『えっ』となった」と振り返る。

 岩橋千塚古墳群は豪族「紀氏」の人々の墓とされ、5世紀初頭から7世紀後半の築造。史跡域(約62万平方メートル)に約430基、全域で約800基が集まり、石室の構造の多種多様さなどが学術的に評価されている。大日山35号墳は県内最大級の前方後円墳で、被葬者はトップクラスの身分だと推定される。出土遺物(埴輪、須恵器)は重要文化財になった。そんな有力者の墓に置く埴輪なら「たまたま両面」とは考えにくく、山本さんは「意識的に違う表情で作っているし、何らかの意味があるはず」と言う。

 顔の矢羽根、矢尻の線刻は入れ墨を表しているとみられ、武器である「矢」は「兵士」を連想させる。「墓を守る意味?」なんて思い描いてみるが、両面の説明にはならない。「胴体があれば服装や持ち物で何か分かるかもしれませんが」と山本さん。胴体は見つかっていないのだ。

 その意味は永遠に謎なのか。作者も、まさか1500年後の人々を悩ませるとは思いもしなかっただろう。【八重樫裕一】

■和歌山県立紀伊風土記の丘

 岩橋千塚古墳群の保存のほか、県内の考古資料や民俗資料を収集・保存して活用を図る博物館施設。資料館(一般190円、大学生90円)があり、大日山35号墳などの古墳を巡る散策路も整備されている。9時~16時半、月曜休館(祝休日の場合は次の平日)。和歌山市岩橋1411。電話073・471・6123。JR和歌山駅東口から和歌山バス「紀伊風土記の丘」行きあり。特別展「岩橋千塚とその時代」(一般350円、大学生210円)を10月1日から12月4日まで開催。

http://mainichi.jp/articles/20160827/ddf/012/040/005000c