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39: 名無し百物語 2015/01/28(水) 22:06:26.97 ID:fQSbg/TY.net
えーとよ、つい最近までホームレスやってたんだよ。 
あることを経験して、今はそれから復帰中だ。NPOとかいうやつの世話で、 
アパートを借りて生活保護を申請した。いや、いつまでもそのままじゃいねえさ。 
毎日職探しに出てるよ。ちゃんと田舎へ戻れるような身分になりてえ。 
先祖代々の墓に入れるようにな。 
でな、このホームレス状態から立ち直ろうと思ったのが、墓の話がきっかけなんだ。 

今年俺は、ある公園にブルーシートを張って住んでた。いやそんなでかいとこじゃなくて、 
そのかわり森が深かった。そこに仲間3人と暮らしてたんだよ。 
ま、仲間って言っても春から夏までの話で、みな冬が迫ってくれば、 
暖かいとこを求めて出て行くんだよ。して、次の年に帰ってこねえことも珍しくねえ。 
だからまあ、行きずりの仲間ってことだ。徳さん、ヨシノ、竹公って仮の名にしとくわ。 
本名は知らねえからどうでもいいようなもんだが。 
ある暑っつい晩に、変な男が俺のテントを訪ねて来たんだよ。 
シートの張った部分を手のひらでバンバンと叩いて。 
顔を出してみたら、スーツを着たやつだったんで緊張した。 
ああ、区役所の福祉部のやつだと思ったんだよ。やつらは自立支援と言うが、 
やることは追い出しだから。 

ところが違ってた。スーツは黒で、俺から見ても仕立てのいいもんだってことがわかった。 
顔はのっぺりとしてて、しわがなかった。じゃ、若いのかっていうと、髪が白髪交じりでね。 
なんか得体の知れない不気味なやつだったんだよ。 
でな、そいつが切り出した話がまた異常な内容だった。 
俺に「田舎に先祖代々の墓はあるか?」って聞いてきて、 
「あるんだったら、そこにあんたが入る権利を売ってくれ」って言うんだ。 
なあ、わけわからねえだろ。俺の田舎はよ、弟が2人いて墓の世話とかやってるはずだし、 
売るなんて言うはずがねえ。ところが「墓所を売ってくれ」とか「墓の権利を売ってくれとか」 
そういうことじゃなかったんだ。そりゃあ、俺は田舎に帰る気はねえよ。 
というか恥ずかしくって帰れねえ。この年になって定職も住む家もねえわけだからな。 
だけど、田舎の墓には実質的には何の関係もねえ話で、 
ただ、俺がその墓に絶対入らないって確約をしてくれってことみたいだった。