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過去記事再掲載について
サイト移転時にお蔵入りになってしまった過去記事の復活を行っていましたが、ようやくほぼ全ての記事のサルベージが終わりました。
復活掲載に関しては完了しましたが、しばらく古い記事に修正や手直しを加えたものを深夜帯、時事性の無い記事のみに限り引き続き掲載させていただきます。ご了承ください。
モス男、金子たちが居ない時期の古ーい記事もありますので、懐かしむ気分で楽しんでいただければ幸いです。
※ネタ投稿のフォームより、調査依頼の投稿をいただきましたのでお答えさせていただきます

01




サワディー、皆様♪
朝はパン派!食パン派!
うしみつ公認マスコットキャラの金子でーす




03



おう、ワシじゃ。銀子じゃ。
朝はご飯に決まっとろう
白米、焼き海苔、白い味噌汁じゃ
今日もどんどん質問に答えていくけんね




うしみつ追記(2018.2.5):
かつてのオカルト調査には「〇〇を探してくれ」タイプではなく、こんな依頼も存在しました。
結局、最後は画像集でお茶を濁しているところに結論の自身の無さが伺えますね。
ちなみに当時の金子は世界各国の挨拶で始まるのが恒例だったので、その名残が見えます。





名無しさんからの質問

幽霊になぜ足がないのか
円山応挙の幽霊画で浸透したのは知っているが、他にどんな説があって初出は何か
うしみつなりの結論と説を聞きたい 
03




え!? 幽霊って足が無かったかしら……
貞子もカヤコも足があるし、オバケのQ太郎にもある
マラソンをする幽霊だっているのに……?
ジャパニーズホラーっていい加減ねぇ 






幽霊に足が無い理由

うしみつ管理人は研究家ではないので、専門的な知識や誇れる自説は持ち合わせておりません。
その為、一般に流布している説に加え、自分の中にある漠としたイメージや知識をなるべく分かりやすくお伝えすることを旨としますので、おかしな点もあるでしょうが、どうぞ軽い気持ちでお読みください。


「足無し幽霊像」がなぜ広まったのか
「幽霊になぜ足が無いのか」・・・長年議論され続けてきた疑問の一つですが、一般的には足の無い幽霊のイメージの嚆矢は円山応挙という江戸時代の絵師によって形作られたと云われています。

本居派の国学者・藤井高尚の随筆『松の落葉』(1829)に有名な記述があります。



今人幽霊といへるものは、足なきもののように思へり。
しかるに百年以前描くところの冤魂には、ことごとく足あり。
さてこの足なき幽霊は、いつ頃より出来しといへるに、こはいと近く、円山主水(応挙)よりおこりしなり。
円山主水、ふと冤鬼のかきかたに工夫をつけて画き出でしより、一時に海内にひろまれり。



落語には「応挙の幽霊」なんていう噺もあり、円山応挙の幽霊画があまりにも見事過ぎる為、絵から飛び出すという騒ぎが語られています。それほど彼の幽霊画は迫真に満ちていたようです。

oyuki
カルフォルニア大学バークレー美術館蔵「幽霊図」

さて、有名な応挙の幽霊画に足が描かれていない理由は、反魂香というお香の煙の中に浮かび上がった人物を描いた為に、煙立ち上る足元がぼんやりと隠れており、浮かび上がった姿も幽体が煙に映ったビジョンの為、半透明となっている・・・と、大体どの解説本にもこのように説明されています。
事実、応挙の幽霊画の一つが所蔵されている久渡寺の木箱には「反魂香之図 洛陽 丸山主水筆」と書かれています。
他にも、蚊帳越しに立つ重病の妻をモデルに描いた等の説もあり、真相ははっきりとしません。
ただし、京都博物館編「応挙名画譜」には楊貴妃とおぼしき女性が煙の中から現われる「反魂香図」という作品が載せられているようなので、幽霊画と反魂香との関連が想像されやすいようです。

さて、この応挙の幽霊画の評価は高く、当時の文献にも「見れば毛が逆立ってしまう」だの「絵を見て気を失った人がいる」だの「この絵は実物の女性の死顔を見ながら描いた」だのと様々な言われようでした。
この足が無い幽霊画のスタイルを応挙の弟子たちや彼のフォロワーが大勢真似をしたため、一般的なイメージとして定着していった、というのが大方の見解です。


足の無い幽霊のイメージは、応挙の幽霊画によって広まった。


という質問者さんのお話は、間違いはないようです。江戸の庶民や一般常識への浸透すべてに応挙の幽霊画のみが影響力を持っているとは思えませんが、当時の文献の評価や、後世の記録においての紹介のされ方を見るに、「足無し幽霊像」広がりのメルクマークとして、応挙の幽霊画が大きな役割を持っていた(持たされていた)という結論で、まあ良いんじゃないでしょうか。


で、初出は何なのか
ちなみに、足の無い幽霊を初めて描いた人は円山応挙である、といったような知識の紹介のされ方は、今ではほとんど見られません。
むしろ、円山応挙って言われてるけど実は違うんだよねー、という雑学として語られることがほとんどです。

足無し幽霊の絵画資料としてよく挙げられるものは以下
寛文十三年(1673) 古浄瑠璃『花山院きさきあらそひ』
元禄三年(1690) 実録本『死霊解脱物語聞書』
宝永五年(1708) 浄瑠璃『傾城反魂香』




などなど、浄瑠璃本の挿絵などにはよく見られ、肉筆画の遺品においては応挙おり明らかに年代が上がる作品が見られないので、はじめて肉筆画で足の無い幽霊を描いたのは円山応挙、としっかり限定されています。
浄瑠璃や歌舞伎など、大衆芸能の世界では早くから足無し幽霊というモチーフが登場していたようで、その理由として

舞台進行上の理由(生きている人間との視覚的区別)
亡者は地獄で鬼卒に足を切られるという伝統的観念があった
歌舞伎の幽霊の衣装(漏斗)が足を隠していたこと

など、様々考えられています。

また、そもそも人形浄瑠璃の女性の人形には足が無く、女らしさを表現した舞台美学として機能していた。女性の姿が多い幽霊画にも、そうした当時の文人趣味に基づいた美学が取り入れられていたのではないか、という説もあります。あるべきものを描かない美学、として春画の女性には肛門を描かない例なども見られます。


絵画資料の初出は手元の資料では古浄瑠璃『花山院きさきあらそひ』より以前は見つかりませんが、仮にあったとしても大した違いはないでしょう。
舞台演出として「幽霊らしさ」を伝える(あるいは便宜上)手段として足の無い幽霊が創出され、それを記録した絵画や挿絵が残されました。
気になるのは「なぜ足の無いことが幽霊らしさを表すポイントとなりえたのか」です。
あまり長くなると金子が寝てしまうので、次でまとめて終わりにします。



海外の幽霊には足があるの?
よく「幽霊の足が無いのは日本だけ」という話を聞きます。
こういう話を聞くたびに「探せば一個くらいあるだろ!」と中国の幽霊にそうした例がないかを探してみるのですが、見つかったためしがありません。
江戸時代の文献ですら次のように書かれています


彼地(中国)に流行する幽霊は、此地にて伝ふる腰以下なき幽霊とは違ふ。
一身全備したる幽霊にて、履の響き などあり。
寛政十二年(1800)『長崎聞見録』


どうやら、海外(中国)の幽霊には足がある、というのが当時からの通説だったようです。

中国の昔話にも幽霊に関する話が多く見られます。中でも面白いのは、幽霊にも人間と同じような感情や生理現象があると考えており、彼ら独特の習性や属性を考え、設定付けていることでした。
吸血鬼のように、弱点もたくさん設定されています。ここでは『捜神記』に収められている話の幽霊の特徴をまとめてみたので、ご覧ください。


①幽霊は人間の唾を嫌がる。
②幽霊は人間の小便を嫌がる。
③幽霊は桃や小豆を嫌がる。
④幽霊には体重が無い(またはとても軽い)
⑤幽霊は死んだばかりは身体が大きく、時がたつにつれて小さくなる。
⑥幽霊は川を渡るときに音を立てない。


④や⑥あたりの属性は、日本の足の無い幽霊を彷彿とさせます。
川を渡るときにジャブジャブという水音を立てない、という話は、なんとなく踏み出した足が地面に触れる前にスッと消えて雲散するようなイメージで再現されます。
そのイメージが大衆芸能の中で取り入れられ、足元を隠し摺り足で近づく幽霊の姿が創出された・・・・・・というわけじゃあ無いとは思いますが、体重がなくフワフワとしたイメージの幽霊像にはしっかりと地面を踏み固める矍鑠とした両足は無くても差し障りがなかったのではないでしょうか。



まとめます。

①足の無い幽霊の肉筆画は円山応挙作と言われているものが最も古い
②その後、応挙フォロワーの手によってたくさんの足の無い幽霊画が描かれ、今まで多くの作品が残されている。そのため、幽霊画の源流として応挙の絵が取り上げられる機会が多く、足無し幽霊像の創出者というイメージが強くなってしまった。
③足の無い幽霊の絵画資料例としては、応挙以前の時代の浄瑠璃挿絵等に複数確認されており、ある程度民衆に認知され共有されたイメージであった
④中国の幽霊には足がある。しかし、体重が無く、足音を立てないといった設定が見られる。
⑤大衆芸能の現場で足の無い幽霊が登場した裏には、演出上・便宜上の理由が考えられているが、「それがむしろ幽霊っぽい!」と思い込めるだけの属性が、古来からの幽霊像にはすでに与えられていた。




03



……起きんしゃい、金子
そろそろワシらの出番じゃぞ



03




むにゃむにゃ……ね、寝てないわよ…
そういえばワタシが夢で会った幽霊は
フェラーリに乗ってロックを聴いてたわ
ブレーキを踏まなきゃだから
やっぱり霊にも足はあるんじゃないかしら?




02



幽霊のイメージも時代に合わせて
変わっていくということじゃろね…
最後に幽霊画を紹介して終わりにするけえ






背筋がゾッとしちゃう幽霊画まとめ


葛飾北斎「さらやしき」jpg
葛飾北斎「さらやしき」


「北斎「生首図」
葛飾北斎「生首図」


月岡芳年「幽霊図」
月岡芳年「幽霊図」


応挙之幽霊。月岡芳年
月岡芳年「応挙之幽霊」


y13-1



牡丹燈籠
作者不明「牡丹燈篭」


丸山応挙
円山応挙「幽霊図」


高木林斎
高木林斎「幽霊画」


松鱗


10
瑞夢筆



11
川上冬崖の『生首を抱く幽霊』
川上冬崖「生首を抱く幽霊」

12
川鍋暁斉
川鍋暁斉「幽霊図」

13
直愛筆


14
鏑木清方
鏑木清方「幽霊図」

15
藤石雲、荒木寛昇
藤石雲、荒木寛昇「首かじり」

16
鰭崎英朋>で、題は<蚊帳の前の幽霊
鰭崎英朋「蚊帳の前の幽霊」

17
6431925
清水節堂「幽霊図」

18
nightblind
松井冬子「鳥眼」


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