1: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:31:30.61 ID:qmqkThZr0
同じ会社で4年間働いたけどおかしいし、怖いことばかりなので
遅まきながら見切りをつけることにしたから、興味があったら話を聞いてほしい
相談できたら、解る人に教えてほしい気持ちもあります
就活の合間に書いていくので、遅くてもご容赦ください
遅まきながら見切りをつけることにしたから、興味があったら話を聞いてほしい
相談できたら、解る人に教えてほしい気持ちもあります
就活の合間に書いていくので、遅くてもご容赦ください
2: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:36:07.07 ID:qmqkThZr0
まずスペックを
男 26
全てに置いて平均、彼女なし
会社
神奈川にある人材派遣会社
わりとホワイト
男 26
全てに置いて平均、彼女なし
会社
神奈川にある人材派遣会社
わりとホワイト
3: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:41:13.10 ID:qmqkThZr0
ずっとバイトをしていた僕が初めて正社員として雇って貰えたのがこの会社だった
といっても、懇意にしていた高校の先輩のつてで入ったから、実力で受かったわけではないとおもう
そこは人材派遣会社で、先輩は人の面倒見がよくてコミュニケーション能力が高い僕に向いてるから、とかなり積極的に僕を推してくれたみたいだった
といっても、懇意にしていた高校の先輩のつてで入ったから、実力で受かったわけではないとおもう
そこは人材派遣会社で、先輩は人の面倒見がよくてコミュニケーション能力が高い僕に向いてるから、とかなり積極的に僕を推してくれたみたいだった
4: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:45:40.17 ID:qmqkThZr0
確かに接客アルバイトを中心に働いていた僕は人と話慣れているし、相談もひとからされがちで
そういうところを部活でよく見ていたらしい
高校時代の僕の印象から、僕にぴったりな仕事だと思ってくれたようで素直に嬉しかった
そういうところを部活でよく見ていたらしい
高校時代の僕の印象から、僕にぴったりな仕事だと思ってくれたようで素直に嬉しかった
6: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:48:40.17 ID:qmqkThZr0
親からは正社員になれ、と強く言われていたし僕自身もなりたかった
だから、人材派遣会社でどういった役回りになるかは解らなかったけど、とにかくやらせてくれるならどんな役割でもちゃんとやってみせて、一人前の正社員になりたかった
だから、人材派遣会社でどういった役回りになるかは解らなかったけど、とにかくやらせてくれるならどんな役割でもちゃんとやってみせて、一人前の正社員になりたかった
8: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:50:11.40 ID:qmqkThZr0
先輩が言うには、派遣は派遣する人それぞれの個性を見極めなきゃならないし、当然派遣先から、派遣する人からクレームもくる
9: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:51:31.68 ID:qmqkThZr0
それらをうまく擦り合わせてお互いが満足しなくちゃならない
その管理をいずれ慣れたらガッツリやってほしい、と言われた
悩みを聞くのが仕事みたいなもんだ、と
その管理をいずれ慣れたらガッツリやってほしい、と言われた
悩みを聞くのが仕事みたいなもんだ、と
10: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:53:34.07 ID:qmqkThZr0
シフト管理やなんかはそれ専門に担当がいるから
とにかくクレーム処理とメンタル管理をしてほしい
そんな風に言われて緊張した記憶がある
正社員成り立ての僕に相談なんかしたがる人がいるだろうかと
とにかくクレーム処理とメンタル管理をしてほしい
そんな風に言われて緊張した記憶がある
正社員成り立ての僕に相談なんかしたがる人がいるだろうかと
11: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:56:02.40 ID:qmqkThZr0
でもとにかくやってみよう
僕は合格した日、先輩の恩に報いる決意をした
両親にも、必ず応えるよう発破をかけられて、顔が引き締まった気がした
僕は合格した日、先輩の恩に報いる決意をした
両親にも、必ず応えるよう発破をかけられて、顔が引き締まった気がした
12: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 22:58:47.68 ID:qmqkThZr0
で、初めての勤務日
6人の同僚と、その長である先輩の前で僕はやる気溢れる自己紹介をし、拍手を貰っていた
同僚達も若い人が多く、本社から来たシフト管理の担当の方以外みな大体20代のようだった
6人の同僚と、その長である先輩の前で僕はやる気溢れる自己紹介をし、拍手を貰っていた
同僚達も若い人が多く、本社から来たシフト管理の担当の方以外みな大体20代のようだった
13: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:02:36.14 ID:qmqkThZr0
僕を入れた8人が働くには充分な広さで、日当たりもよくお洒落な内装
明らかにまだ新しい会社で、先輩がリーダーになってから一年経った程度だという
大元の派遣会社は大手で、若くして支店を任された先輩はかなり優秀なのだと感じた
明らかにまだ新しい会社で、先輩がリーダーになってから一年経った程度だという
大元の派遣会社は大手で、若くして支店を任された先輩はかなり優秀なのだと感じた
15: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:06:48.28 ID:qmqkThZr0
実際、学生時代からバレー部の部長で頼られていたし自信満々な話し方は実績に見合う頼りがいに溢れた声と調和してる
僕は、熱い気持ちで憧れていたし尊敬していた
しかもこんな先輩に推薦して貰えたのだからプレッシャーにもなっていた
必ず役に立たなければ、と
僕は、熱い気持ちで憧れていたし尊敬していた
しかもこんな先輩に推薦して貰えたのだからプレッシャーにもなっていた
必ず役に立たなければ、と
17: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:11:46.86 ID:qmqkThZr0
最初のうち、僕は周りを気にする余裕などまったくなかった
思ったより仕事は沢山ありフットワークの軽さも大事だった
派遣する方々の面接から派遣先の要求、希望する職種との擦り合わせ、派遣先の要求、それに対するクレーム
その合間に派遣先に直に足を運び、謝罪したり派遣人数の増減について話し合う…目まぐるしく人と関わることになる
思ったより仕事は沢山ありフットワークの軽さも大事だった
派遣する方々の面接から派遣先の要求、希望する職種との擦り合わせ、派遣先の要求、それに対するクレーム
その合間に派遣先に直に足を運び、謝罪したり派遣人数の増減について話し合う…目まぐるしく人と関わることになる
18: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:15:15.11 ID:qmqkThZr0
最初の三ヶ月は同僚の小林さん…男性で25…が一緒に居ながら教えてくれた
それ以外にも僕の解らないことは皆が積極的に教えてくれる
いま思えば、みんながどこか、僕の様子をいつも伺っていたのかもと思うくらい過保護な気もする
それ以外にも僕の解らないことは皆が積極的に教えてくれる
いま思えば、みんながどこか、僕の様子をいつも伺っていたのかもと思うくらい過保護な気もする
19: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:17:40.42 ID:qmqkThZr0
頭がぐるぐるして、家に帰ってから何をどうしていたのかも解らない期間が終わり、僕はようやく少し余裕ができていた
おそらくそれが最初の6ヶ月
僕が会社の違和感にようやく気づいた頃だった
おそらくそれが最初の6ヶ月
僕が会社の違和感にようやく気づいた頃だった
20: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:25:25.88 ID:qmqkThZr0
違和感、それは最初仕事上の違和感だった
派遣先の会社の資料はこの仕事場にあるのに、派遣社員やアルバイターの資料はこの階の上の階に纏めているのだ
派遣先の会社の資料はこの仕事場にあるのに、派遣社員やアルバイターの資料はこの階の上の階に纏めているのだ
21: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:28:56.35 ID:qmqkThZr0
きっちり、正しくアルファベット順に履歴書をファイルしてあるし
ぶっちゃけパソコンに全てインプットしてあるのだから頻繁に使う部屋ではない
使うのは初めて雇用したときに仕舞う場合と、逆に辞めたときに履歴書をお返しするとき
それくらいだろう
ぶっちゃけパソコンに全てインプットしてあるのだから頻繁に使う部屋ではない
使うのは初めて雇用したときに仕舞う場合と、逆に辞めたときに履歴書をお返しするとき
それくらいだろう
22: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:33:31.45 ID:qmqkThZr0
ではなぜそれが違和感かというと
誰一人行きたがらないからだ
面接後、合格した人の履歴書をファイルして部屋に持っていきしまうとき、皆がみんなさも面倒臭い感じで机に放置する
見かねたリーダー、先輩が笑いながら
「みんな不精だなあ」とかなんとか行ったあと
「すまないが僕さん、みんなの分をまとめて持って行ってくれ」
という
誰一人行きたがらないからだ
面接後、合格した人の履歴書をファイルして部屋に持っていきしまうとき、皆がみんなさも面倒臭い感じで机に放置する
見かねたリーダー、先輩が笑いながら
「みんな不精だなあ」とかなんとか行ったあと
「すまないが僕さん、みんなの分をまとめて持って行ってくれ」
という
23: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:37:32.71 ID:qmqkThZr0
最初は皆、自分より忙しいんだし
こういうのは下っ端の役目だと当然思っていた
だが、繰り返されるうち、おかしいと気づく
なぜなら大体の人はまめで、動くことを苦にする人があまり居ないからだ
こういうのは下っ端の役目だと当然思っていた
だが、繰り返されるうち、おかしいと気づく
なぜなら大体の人はまめで、動くことを苦にする人があまり居ないからだ
24: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:40:02.60 ID:qmqkThZr0
ある人は好きなコーヒーがないからと、ビル内の自販機じゃない、離れた場所にあるブランドのコーヒーを買いにいくし
ある人は会社帰りに派遣先に挨拶に立ち寄る必要もないのに差し入れをしに行く
それなのに二人共、倉庫に行くのは明らかに避けている
ある人は会社帰りに派遣先に挨拶に立ち寄る必要もないのに差し入れをしに行く
それなのに二人共、倉庫に行くのは明らかに避けている
25: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:42:04.37 ID:qmqkThZr0
なんだか…不自然じゃないか?
僕はだんだん不審に思うようになった
そして履歴書や資料が置かれた部屋から戻ると、幾人かは必ず僕を注視したあと目を逸らす
僕はだんだん不審に思うようになった
そして履歴書や資料が置かれた部屋から戻ると、幾人かは必ず僕を注視したあと目を逸らす
26: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:45:13.26 ID:qmqkThZr0
そんなある日、僕は訝りながらもまた履歴書をもって階段を登っていた
部屋に入ると少しホコリ臭く感じ、ほんの少し換気しようと窓を開ける
一息ついて、履歴書を仕舞う…と
ふと使われていない事務机にファイルが置かれていた
部屋に入ると少しホコリ臭く感じ、ほんの少し換気しようと窓を開ける
一息ついて、履歴書を仕舞う…と
ふと使われていない事務机にファイルが置かれていた
27: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:47:54.57 ID:qmqkThZr0
おや、誰か仕舞わずに置いて忘れたのか
僕は迷わずファイルを取り上げた
そして、ぎょっとする
ファイルに入っていた履歴書はズタズタになっていた
手で破られたのではない
何かに噛まれたように細かい、ギザギザの跡が幾つもついていた
僕は迷わずファイルを取り上げた
そして、ぎょっとする
ファイルに入っていた履歴書はズタズタになっていた
手で破られたのではない
何かに噛まれたように細かい、ギザギザの跡が幾つもついていた
28: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:51:00.83 ID:qmqkThZr0
角はすべてない
履歴の写真はギザギザ部分はあるものの
少女と言えるくらい若い女性の生真面目な両目ははっきりと見えた
なんだこれ
本能的に汚らわしい…なにか気味の悪いものに触れてしまったような気がした
履歴の写真はギザギザ部分はあるものの
少女と言えるくらい若い女性の生真面目な両目ははっきりと見えた
なんだこれ
本能的に汚らわしい…なにか気味の悪いものに触れてしまったような気がした
29: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/15(土) 23:54:38.52 ID:qmqkThZr0
ネズミだ、とまず思った
そして謎が溶けた気もした
ネズミがでるから、みんな来たがらなかったんだ、と
紙は齧られているのにキッチリとファイルに仕舞われていることにも
そのファイルに傷ひとつないことにも
多分誰かしらにきけば、簡単に答えが帰ってくるに違いない
僕は勝手に謎が解けた気になっていた
そして謎が溶けた気もした
ネズミがでるから、みんな来たがらなかったんだ、と
紙は齧られているのにキッチリとファイルに仕舞われていることにも
そのファイルに傷ひとつないことにも
多分誰かしらにきけば、簡単に答えが帰ってくるに違いない
僕は勝手に謎が解けた気になっていた
35: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 08:35:48.73 ID:UBwmqQx60
換気して窓を閉めたあと
僕はそのファイルに直に触るのは嫌だったので、間にティッシュを挟むと階下に戻る
そして近くにいた同僚の一人時任さんにファイルを差し出した
「あの、これ、上の資料室に忘れられていたんですが…」
状態が非常に悪い、と伝えようとする前に
「うわっ」
と叫ばれ、派手な音を立てて椅子ごと引かれた
僕はそのファイルに直に触るのは嫌だったので、間にティッシュを挟むと階下に戻る
そして近くにいた同僚の一人時任さんにファイルを差し出した
「あの、これ、上の資料室に忘れられていたんですが…」
状態が非常に悪い、と伝えようとする前に
「うわっ」
と叫ばれ、派手な音を立てて椅子ごと引かれた
36: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 08:40:02.05 ID:UBwmqQx60
時任さんは反射的に僕を睨み、それから力を抜いた
「どうしましたか」と聞いた僕に
「いや…いや、なんでもない すまない、これが上にあったって?」
「はい、使われてない机にポツンと」
明らかに時任さんは挙動がおかしい
差し出しているのに受け取らない
それどころか引いた椅子を戻しもしない
「どうしましたか」と聞いた僕に
「いや…いや、なんでもない すまない、これが上にあったって?」
「はい、使われてない机にポツンと」
明らかに時任さんは挙動がおかしい
差し出しているのに受け取らない
それどころか引いた椅子を戻しもしない
37: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 08:48:06.69 ID:UBwmqQx60
「…で、この辺り、ネズミが噛んだのでしょうか ギザギザに削れてるんです
もし資料室にネズミがいるなら問題ですよね」
しかし、時任さんはやけに早口で
「うん、じゃあそれ持ってリーダーんとこ行ってきて 僕には関係ないから」
畳み掛けると椅子から立ち上がり逃げるように鞄をひったくって、
「面接、準備」とカタコトを残して去っていってしまった
逃げるように?
いやまさに逃げたんだろう
僕は時任さんが最後までファイルに触れることさえしなかった事に強烈な興味と不安が湧いていた
もし資料室にネズミがいるなら問題ですよね」
しかし、時任さんはやけに早口で
「うん、じゃあそれ持ってリーダーんとこ行ってきて 僕には関係ないから」
畳み掛けると椅子から立ち上がり逃げるように鞄をひったくって、
「面接、準備」とカタコトを残して去っていってしまった
逃げるように?
いやまさに逃げたんだろう
僕は時任さんが最後までファイルに触れることさえしなかった事に強烈な興味と不安が湧いていた
40: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 09:55:38.20 ID:UBwmqQx60
僕は一旦自分の鞄にファイルを入れた
暇なときにじっくり見てみようと
入れる前に履歴書の名前だけ見る
氏名の部分はあまり齧られていない
女性らしさのあまり無いかっちりとした字で「篠原朱音」と書いてあった
しかし、結果的に家に持ち帰ることは不可能になった
暇なときにじっくり見てみようと
入れる前に履歴書の名前だけ見る
氏名の部分はあまり齧られていない
女性らしさのあまり無いかっちりとした字で「篠原朱音」と書いてあった
しかし、結果的に家に持ち帰ることは不可能になった
41: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 09:58:57.18 ID:UBwmqQx60
小休憩している時に、先輩…リーダーがツカツカとやってきて
「ファイル」とだけ言って手をさしだした
僕はいままさに見ていた派遣社員のファイルを渡そうとしたがリーダーは違う、と冷たく言い放った
「資料室にあったファイルは?」
ハッとしてカバンから取り出すと、リーダーは険しい顔をした
「ファイル」とだけ言って手をさしだした
僕はいままさに見ていた派遣社員のファイルを渡そうとしたがリーダーは違う、と冷たく言い放った
「資料室にあったファイルは?」
ハッとしてカバンから取り出すと、リーダーは険しい顔をした
42: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:05:12.60 ID:UBwmqQx60
「まさか持ち帰るつもりじゃなかったろうな?個人情報を」
その声は容赦がなかった
僕は迂闊だった
なぜ、カバンなどに突っ込んだんだ?
普段なら絶対にしない、してはいけないのに
「いえ、後でお渡しするつもりでした」
冷水をがぶ飲みしたように、腹の底が冷え切っていた
裏腹に多意の感じられない素直な答えが自然と出てきて、その口調にリーダーの声と表情が和らぐ
「ならいい、誤解を招くような行動は慎めよ?」
と言ってファイルを受け取り自席に戻る
その声は容赦がなかった
僕は迂闊だった
なぜ、カバンなどに突っ込んだんだ?
普段なら絶対にしない、してはいけないのに
「いえ、後でお渡しするつもりでした」
冷水をがぶ飲みしたように、腹の底が冷え切っていた
裏腹に多意の感じられない素直な答えが自然と出てきて、その口調にリーダーの声と表情が和らぐ
「ならいい、誤解を招くような行動は慎めよ?」
と言ってファイルを受け取り自席に戻る
43: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:10:27.62 ID:UBwmqQx60
無造作に引き出しに突っ込んだように見えたが、その速さになんとなくリーダーもアレを持っていたくないのでは、と思えた
この頃から僕は何かが気になり始めたんだと思う
具体的に「これが気になる」というのではなく…例えば、僕だけが知らない何かがあるような気がするのだ
この頃から僕は何かが気になり始めたんだと思う
具体的に「これが気になる」というのではなく…例えば、僕だけが知らない何かがあるような気がするのだ
44: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:17:56.00 ID:UBwmqQx60
僕は気になることがあるとかなり粘着質な方かもしれない
家に帰ると手早く履歴書の名前をGoogleで調べてみた
するとTwitterの同姓同名だろうか、アカウントが4件くらいヒットした
Twitterを実名でやる人もいるだろう
もしかするとこのうちの一件が、履歴書の彼女かもしれない
有りがちな名前ではないし
家に帰ると手早く履歴書の名前をGoogleで調べてみた
するとTwitterの同姓同名だろうか、アカウントが4件くらいヒットした
Twitterを実名でやる人もいるだろう
もしかするとこのうちの一件が、履歴書の彼女かもしれない
有りがちな名前ではないし
45: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:21:34.21 ID:UBwmqQx60
僕はストーカーまがいな気がして尻込みしつつ、どうせ気になって堪らないのだからと一件一件見てやろうとしていた
その時、手元にゴキブリが居ることに気づく
ヒエッと手を引くともうスピードで走り出す
慌てて殺虫剤を取ろうと見回したとき驚いて固まってしまった
その時、手元にゴキブリが居ることに気づく
ヒエッと手を引くともうスピードで走り出す
慌てて殺虫剤を取ろうと見回したとき驚いて固まってしまった
46: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:26:38.24 ID:UBwmqQx60
ゴキブリが僕のカバンから、二、三匹出てきたのだ
気味悪さに小さく叫んでしまう
スプレーを撒きまくりようやくすべてを始末すると恐る恐るカバンを開け中身を出した
ザッと広げた資料や筆記用具の間に潰れたゴキブリの死体がある
それから吐き気を伴う悪臭
生ゴミよりもなお酷い
気味悪さに小さく叫んでしまう
スプレーを撒きまくりようやくすべてを始末すると恐る恐るカバンを開け中身を出した
ザッと広げた資料や筆記用具の間に潰れたゴキブリの死体がある
それから吐き気を伴う悪臭
生ゴミよりもなお酷い
47: 本当にあった怖い名無し 2022/10/16(日) 10:29:50.92 ID:QzMVeFGM0
呪いのファイルってとこかな?
48: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:30:12.49 ID:UBwmqQx60
あまりにもおかしい
僕はゴキブリが住み着くような何かを入れてはいない
誰かが悪戯でカバンに入れたにしても、カバンには隙間があるのだから大人しく居着くわけがない
それに悪戯するような時間を僕は作っていない、昼は朝に買っているパンを食べたから社から出てない…だとしたら、なんだ?
僕はゴキブリが住み着くような何かを入れてはいない
誰かが悪戯でカバンに入れたにしても、カバンには隙間があるのだから大人しく居着くわけがない
それに悪戯するような時間を僕は作っていない、昼は朝に買っているパンを食べたから社から出てない…だとしたら、なんだ?
49: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:35:29.03 ID:UBwmqQx60
理屈じゃない
僕の直感は
あのファイルを一度カバンに入れたからだ
と感じていた
そんなことあるはずない、とか常識とかは考えられない
あの怖気を感じたファイルの感触の全部が僕の考えを裏付けてる気がしていた
僕の直感は
あのファイルを一度カバンに入れたからだ
と感じていた
そんなことあるはずない、とか常識とかは考えられない
あの怖気を感じたファイルの感触の全部が僕の考えを裏付けてる気がしていた
50: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 10:38:01.00 ID:UBwmqQx60
余談ですが、書いてる今現在
ちょうど、扇風機が暴走していて怖いです
勝手に送風スピードを変えまくってます
誰かがボタンを押していると怖いので一旦逃げます
また書きます
ちょうど、扇風機が暴走していて怖いです
勝手に送風スピードを変えまくってます
誰かがボタンを押していると怖いので一旦逃げます
また書きます
55: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 12:44:22.27 ID:UBwmqQx60
読んでくださってる皆様、ありがとうございます
書いてると思いだして怖い反面、スッキリしています
日記形式にまとめてはいますが、省略が難しく長くてすみません
ちなみに同僚やその他の名前は全て変えています
仕事はあと一週間程で辞められます
怖くて仕方ないですが最後まで頑張ります
書いてると思いだして怖い反面、スッキリしています
日記形式にまとめてはいますが、省略が難しく長くてすみません
ちなみに同僚やその他の名前は全て変えています
仕事はあと一週間程で辞められます
怖くて仕方ないですが最後まで頑張ります
56: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 12:48:30.44 ID:UBwmqQx60
戻りました
ゴキブリの騒動で僕は篠原朱音の名前を調べることに躊躇いがあった
何故か調べた途端に中断させられたことが怖かった
偶然とは考えられない
そう思うくらい僕は気味悪さにゾッとしていた
だが、始めたことを辞めたところで悶々とするに決まってる
ゴキブリの騒動で僕は篠原朱音の名前を調べることに躊躇いがあった
何故か調べた途端に中断させられたことが怖かった
偶然とは考えられない
そう思うくらい僕は気味悪さにゾッとしていた
だが、始めたことを辞めたところで悶々とするに決まってる
57: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 12:54:37.41 ID:UBwmqQx60
僕はまた異変があったら気づくよう、カバンを背後から見える場所に移し、パソコンの前に座る
マウスを持つ手の側に嫌らしい虫が居ないことを確認し、名前を調べる作業に戻る
マウスを持つ手の側に嫌らしい虫が居ないことを確認し、名前を調べる作業に戻る
58: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 13:08:34.51 ID:UBwmqQx60
すると一件のアカウントが、ひょっとしたら彼女では?と思えた
写真などはなかったが…
意外なことに彼女は「派遣社員」ではなく僕と同じ「人材派遣会社」で働く社員らしいのだ
そして僕は一番新しいツイートが一年前のものだと気づいた
写真などはなかったが…
意外なことに彼女は「派遣社員」ではなく僕と同じ「人材派遣会社」で働く社員らしいのだ
そして僕は一番新しいツイートが一年前のものだと気づいた
59: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 13:12:41.51 ID:UBwmqQx60
もしかしたら、彼女は僕の先輩なのかもしれない
僕より前にあの会社、もしくは本社などで働いていたのかも
それなら履歴書があっても不思議では…
僕の指が震えた
彼女のツイートにたいして彼女の友達らしき女性が応えていた
ぽちこ、という女性の言葉だ
僕より前にあの会社、もしくは本社などで働いていたのかも
それなら履歴書があっても不思議では…
僕の指が震えた
彼女のツイートにたいして彼女の友達らしき女性が応えていた
ぽちこ、という女性の言葉だ
60: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 13:18:52.95 ID:UBwmqQx60
朱音ちゃんが居なくなって寂しいよ
なんで相談もなく…あんな死に方は辛いよ
…
って言っても朱音ちゃんはもう天国で安らかなんだもんね
力になってあげられなくてごめんね
大好きだよ
この文章の意味する所は一つしかない
篠原朱音は自殺をしていた?
自殺、ではないにしても、もうこの世にはいないらしい…
僕はズタズタの履歴書に貼られた顔写真の真剣な両目を思い出して背中に鳥肌が立った
なんで相談もなく…あんな死に方は辛いよ
…
って言っても朱音ちゃんはもう天国で安らかなんだもんね
力になってあげられなくてごめんね
大好きだよ
この文章の意味する所は一つしかない
篠原朱音は自殺をしていた?
自殺、ではないにしても、もうこの世にはいないらしい…
僕はズタズタの履歴書に貼られた顔写真の真剣な両目を思い出して背中に鳥肌が立った
61: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 13:22:23.60 ID:UBwmqQx60
酷いし自分勝手とも思う
なんらかの理由で、この世に居ない人に勝手に恐怖して
しかもまだ彼女だという確定もなしに
でも僕はこの事実が衝撃的で、いますぐ彼女の正体を見極めるのが怖くなってしまった
なぜか、わけのわからない事象に引き寄せられているような気さえした
なんらかの理由で、この世に居ない人に勝手に恐怖して
しかもまだ彼女だという確定もなしに
でも僕はこの事実が衝撃的で、いますぐ彼女の正体を見極めるのが怖くなってしまった
なぜか、わけのわからない事象に引き寄せられているような気さえした
62: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 13:25:08.89 ID:UBwmqQx60
せっかく望まれて入った会社だ
先輩に恩もある
余計なことは考えないことだ
僕は調べた事実を確認することを辞めた
モヤモヤしたからなんだというのか
好奇心がろくなことを招きかねないのならこれ以上、糸をたぐるのはやめよう
僕は忘れたフリをして、寝ることにした
先輩に恩もある
余計なことは考えないことだ
僕は調べた事実を確認することを辞めた
モヤモヤしたからなんだというのか
好奇心がろくなことを招きかねないのならこれ以上、糸をたぐるのはやめよう
僕は忘れたフリをして、寝ることにした
68: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:21:12.43 ID:UBwmqQx60
なにもかもをうやむやにしようと決めてから暫くは特になにもなかった
相変わらず履歴書を置きには言っていたがまたあのファイルがある、等といったこともなく…
社員たちも何事も言わないし話題にも出ない
時任さんがリーダーに伝えたに違いないのだが、特にそれについて話はない
相変わらず履歴書を置きには言っていたがまたあのファイルがある、等といったこともなく…
社員たちも何事も言わないし話題にも出ない
時任さんがリーダーに伝えたに違いないのだが、特にそれについて話はない
69: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:30:58.17 ID:UBwmqQx60
白々しい様な空気のなか、面接日が来た
たまにこの場所で派遣社員の面接を行うときがあるのだ
今回は僕が担当していたから、普段は社員が飯を食べるカフェの様な仕切られた空間で準備をする
すぐそばで社員達が働いているのを横目に面接を行うことに緊張する人もいるが、刺激を貰える人もいるだろう
その時、ドアがコンッと鳴った
たまにこの場所で派遣社員の面接を行うときがあるのだ
今回は僕が担当していたから、普段は社員が飯を食べるカフェの様な仕切られた空間で準備をする
すぐそばで社員達が働いているのを横目に面接を行うことに緊張する人もいるが、刺激を貰える人もいるだろう
その時、ドアがコンッと鳴った
70: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:34:35.75 ID:UBwmqQx60
早くないか?
反射的に時計を見上げた
まだ面接まで20分はある…だが遅刻よりはマシだ
どうぞ、と声をかけるが、またドアが鳴った
「お入りください」
だが入らない 何してるんだ、とドアを開けたが誰も居ない
「なんなんだ」と見回す
他社員は誰も近づいていない
反射的に時計を見上げた
まだ面接まで20分はある…だが遅刻よりはマシだ
どうぞ、と声をかけるが、またドアが鳴った
「お入りください」
だが入らない 何してるんだ、とドアを開けたが誰も居ない
「なんなんだ」と見回す
他社員は誰も近づいていない
71: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:37:29.29 ID:UBwmqQx60
ドアを閉め、戻ろうとして足が止まった
…冗談だろ
黒いヒールが、キチンと揃えて椅子の下においてある
あたかも誰かが座っているように
だが人は居ない
こんなものはなかった、絶対に
…冗談だろ
黒いヒールが、キチンと揃えて椅子の下においてある
あたかも誰かが座っているように
だが人は居ない
こんなものはなかった、絶対に
73: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:43:04.97 ID:UBwmqQx60
怖いというより唖然として歩み寄っていく
なんだ、この靴は…
拾い上げようと屈んだとき、机の下で女と目が合った
全身が硬直した
女は長い黒髪を垂らして屈み掛けて中腰の僕を凝視していた
それでいて、全く僕を見ていないような目だった…背後を見ているような
なんだ、この靴は…
拾い上げようと屈んだとき、机の下で女と目が合った
全身が硬直した
女は長い黒髪を垂らして屈み掛けて中腰の僕を凝視していた
それでいて、全く僕を見ていないような目だった…背後を見ているような
74: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:51:39.54 ID:UBwmqQx60
僕は金縛りみたいに動けず、目も離せなかった
女が「あっ いあとー」みたいな言葉を発し、大きな口を開けた時に肩を後ろから掴まれ叫んのうち女性の佐藤さんが立っていた
「…さ、とうさん」
頭が働かなかった
あれは…今度こそ恐怖が追いついてきた
あれは、人間ではない
なんだ、あれは
女が「あっ いあとー」みたいな言葉を発し、大きな口を開けた時に肩を後ろから掴まれ叫んのうち女性の佐藤さんが立っていた
「…さ、とうさん」
頭が働かなかった
あれは…今度こそ恐怖が追いついてきた
あれは、人間ではない
なんだ、あれは
75: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 16:56:24.42 ID:UBwmqQx60
>>74
途中抜けました
叫んだ、がそれはシフト担当二人のうち女性の
ですすみません
ここは今でも恐ろしくて冷静になれてません
応援感謝です、励まされました!
途中抜けました
叫んだ、がそれはシフト担当二人のうち女性の
ですすみません
ここは今でも恐ろしくて冷静になれてません
応援感謝です、励まされました!
77: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 17:15:33.21 ID:UBwmqQx60
声をかけられてもぼうっとしている僕を立つように促し、心配そうに様子をみる佐藤さんに
「女性が…机の下に居たんです…」
佐藤さんは意外にも「あらそう」といった感じで平気な顔をしていた
「そんな話、絶対に他の人に言うんじゃないよ? クビになるから」
と言ってサッサとアンケート用紙を置いて出て行ってしまった
「女性が…机の下に居たんです…」
佐藤さんは意外にも「あらそう」といった感じで平気な顔をしていた
「そんな話、絶対に他の人に言うんじゃないよ? クビになるから」
と言ってサッサとアンケート用紙を置いて出て行ってしまった
78: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 17:20:25.84 ID:UBwmqQx60
人生で初めて、説明不明なモノを見たわりには、面接でトチる訳でもなく全う出来た気がする
むしろ、あんなことのあとに普段の仕事があったことで気持ちを保てたんじゃないだろうか
面接のあとも、リーダーにも他の同僚にも相談もせず、僕は業務を終了した
むしろ、あんなことのあとに普段の仕事があったことで気持ちを保てたんじゃないだろうか
面接のあとも、リーダーにも他の同僚にも相談もせず、僕は業務を終了した
79: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 17:25:11.60 ID:UBwmqQx60
帰ってからも深く考えないようにした
日記のようなメモに記したあとは思い出さないようにした
書いてしまえば心に残らないはず
考えれば止まらない気がした
今まであんなものを見たことがないから、見間違いだと言い聞かせた
いきなり暗い机の下を覗いたから貧血になって幻覚を見たとかなんとか
日記のようなメモに記したあとは思い出さないようにした
書いてしまえば心に残らないはず
考えれば止まらない気がした
今まであんなものを見たことがないから、見間違いだと言い聞かせた
いきなり暗い机の下を覗いたから貧血になって幻覚を見たとかなんとか
80: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 17:33:07.09 ID:UBwmqQx60
次の日、さっぱりと晴れ渡った青空を拝むと、途端に昨日の出来事が白昼夢のような曖昧さでどうでもよくなった
佐藤さんに話してしまったことさえ、恥ずかしく取り消したくなった
あれは、勘違いでした…と
努め始めてから一年、業務にも慣れて同僚と遜色ない働きが出来ている
忙しさに体は慣れても精神が追いついてないんだろう
佐藤さんに話してしまったことさえ、恥ずかしく取り消したくなった
あれは、勘違いでした…と
努め始めてから一年、業務にも慣れて同僚と遜色ない働きが出来ている
忙しさに体は慣れても精神が追いついてないんだろう
81: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 17:35:37.36 ID:UBwmqQx60
今思うと言い訳だった
辞めないために自分のせいにするしかなかった
給料も悪くない、先輩に申し訳ない、そんな理由で僕はどうしても異常な出来事をなかったことにしたかった
辞めないために自分のせいにするしかなかった
給料も悪くない、先輩に申し訳ない、そんな理由で僕はどうしても異常な出来事をなかったことにしたかった
83: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:02:24.65 ID:UBwmqQx60
あのあとも佐藤さんは普通に接してくれていたが、僕にはあのときの彼女の態度が時間が経つにつれておかしく思えた
なんだか、見えたことに疑問を抱いていない、というか僕が言ったことをすんなり信じてくれたように感じた
彼女も見たことがあるのかな…考えないようにしてるくせにふと、疑問に思う日々
いっそ、直に聞いてみようと思った
もしも彼女も見たことがあるなら、用意していた言い訳が無意味になる
なんだか、見えたことに疑問を抱いていない、というか僕が言ったことをすんなり信じてくれたように感じた
彼女も見たことがあるのかな…考えないようにしてるくせにふと、疑問に思う日々
いっそ、直に聞いてみようと思った
もしも彼女も見たことがあるなら、用意していた言い訳が無意味になる
84: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:06:22.58 ID:UBwmqQx60
それでも、仲間がいたことで安心できるし何より心の底で僕を蝕んでいた
本当はなにもいなくて、僕こそが見えないものを「ある」と思い込んでる異常者なのでは?
という恐怖感から逃れられると思った
僕は自分こそオカシイ、という考えが何よりも怖かった
本当はなにもいなくて、僕こそが見えないものを「ある」と思い込んでる異常者なのでは?
という恐怖感から逃れられると思った
僕は自分こそオカシイ、という考えが何よりも怖かった
85: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:11:15.10 ID:UBwmqQx60
聞いてみる覚悟は決まった
二人きりになる事はなかなか大変だったが、ついにチャンスに恵まれた
佐藤さんが退社するタイミングで、僕も仕事に蹴りがつき、後を追うように退社したのだ
声を掛けた僕に佐藤さんは快く足を止め、話の内容を知ると
「歩きながら話そうか」と二人並んで歩く事を提案してきた
二人きりになる事はなかなか大変だったが、ついにチャンスに恵まれた
佐藤さんが退社するタイミングで、僕も仕事に蹴りがつき、後を追うように退社したのだ
声を掛けた僕に佐藤さんは快く足を止め、話の内容を知ると
「歩きながら話そうか」と二人並んで歩く事を提案してきた
86: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:14:32.60 ID:UBwmqQx60
ある程度、社から離れると佐藤さんはガラガラのマックに入り、適当に注文すると四人席に座った
僕はあのときの佐藤さんに感じた不自然さと、前々から気になってした資料室に皆が入りたがらない理由を聞いた
佐藤さんはウンウン、と頷いて観念したようにため息をついた
僕はあのときの佐藤さんに感じた不自然さと、前々から気になってした資料室に皆が入りたがらない理由を聞いた
佐藤さんはウンウン、と頷いて観念したようにため息をついた
87: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:18:41.12 ID:UBwmqQx60
「まあ、いつかは気づくわよね
私は入って三ヶ月くらいで気付いた」
「佐藤さんは、他の方より後に入ったんですか?」
「知らないよね、誰も敢えて話さないもんね…私はね、後釜で本社から出向してるの …篠原朱音さんの後釜で」
その名前がサラッと出てきて、僕は手にしたコーヒーを置いた
私は入って三ヶ月くらいで気付いた」
「佐藤さんは、他の方より後に入ったんですか?」
「知らないよね、誰も敢えて話さないもんね…私はね、後釜で本社から出向してるの …篠原朱音さんの後釜で」
その名前がサラッと出てきて、僕は手にしたコーヒーを置いた
88: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:25:14.38 ID:UBwmqQx60
「私が話したって言わないで、もしもあなたがリーダーや他の人に言ったら…」
「言いません」
佐藤さんはま、いっかと呟いて
「篠原朱音さんはね、新しい支店を作った時にリーダーに選ばれた人なの
今居るうち、下平、安藤、時任さんも
安藤さんはシフト担当でしょ?前は篠原さんと組んでたの」
「そうだったんですね」
しかし時任さんは前に篠原さんの履歴書を見せた時に「自分には関係ない」と言っていたが…
そう伝えると
「言いません」
佐藤さんはま、いっかと呟いて
「篠原朱音さんはね、新しい支店を作った時にリーダーに選ばれた人なの
今居るうち、下平、安藤、時任さんも
安藤さんはシフト担当でしょ?前は篠原さんと組んでたの」
「そうだったんですね」
しかし時任さんは前に篠原さんの履歴書を見せた時に「自分には関係ない」と言っていたが…
そう伝えると
90: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:29:10.72 ID:UBwmqQx60
「関わりたくなかったんでしょ、時任はリーダーの昔からの腰ぎんちゃくだし、リーダーのお追従ぐらいしか取り柄がないんだから」
柔和な顔立ちから想像できない辛辣さで吐き捨てる
リーダー?…時任さんが先輩の太鼓持ちであることが関係あるのか?
「ハッキリ言うとね、篠原さんが自殺したのは、リーダーのせいだから」
柔和な顔立ちから想像できない辛辣さで吐き捨てる
リーダー?…時任さんが先輩の太鼓持ちであることが関係あるのか?
「ハッキリ言うとね、篠原さんが自殺したのは、リーダーのせいだから」
91: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:34:57.17 ID:UBwmqQx60
「え…」
僕は絶句した
そんな話だとは夢にも思わなかった
Twitterの彼女は自殺のような雰囲気があった
つまりあれは本当に本人なのかも…
ごちゃごちゃ考えていると
「聞いた話だとリーダーが他の女と色々あって、ノイローゼになった篠原さんが自殺したってわけ
ありがちな話でしょ?ただ、ちょっと違うのはうちの社の食堂で死んだってことかな、深夜に警備の人が発見したらしいわよ」
頭が真っ白になった
僕は絶句した
そんな話だとは夢にも思わなかった
Twitterの彼女は自殺のような雰囲気があった
つまりあれは本当に本人なのかも…
ごちゃごちゃ考えていると
「聞いた話だとリーダーが他の女と色々あって、ノイローゼになった篠原さんが自殺したってわけ
ありがちな話でしょ?ただ、ちょっと違うのはうちの社の食堂で死んだってことかな、深夜に警備の人が発見したらしいわよ」
頭が真っ白になった
92: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:38:22.83 ID:UBwmqQx60
「やっぱり聞いてないんだ、リーダーがあなたを引っ張ってきた時に察した
…あなたにバレてもリーダーの後輩だし逆らえないって思ったんだろうね」
その言葉は心底僕を打ちのめした
ショックだった、貸し、として職を与えられていたのか…と
…あなたにバレてもリーダーの後輩だし逆らえないって思ったんだろうね」
その言葉は心底僕を打ちのめした
ショックだった、貸し、として職を与えられていたのか…と
94: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:45:55.03 ID:UBwmqQx60
そのあと、話したことは
食堂では皆がなんらかの体験をしていそう
「いそう」というのは頑なに話さない人がいるから(先輩と時任さん)
他の人は「気の所為」にしている
資料室にも何かがでる、周りに人が居ないため食堂より恐ろしくてみんな行きたがらない
篠原さんの履歴書を僕が持ってきたとき、戦々恐々としていた
など
僕は最高に気味が悪くて
最高に安心するという矛盾じみた思いを味わっていた
食堂では皆がなんらかの体験をしていそう
「いそう」というのは頑なに話さない人がいるから(先輩と時任さん)
他の人は「気の所為」にしている
資料室にも何かがでる、周りに人が居ないため食堂より恐ろしくてみんな行きたがらない
篠原さんの履歴書を僕が持ってきたとき、戦々恐々としていた
など
僕は最高に気味が悪くて
最高に安心するという矛盾じみた思いを味わっていた
95: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:50:32.26 ID:UBwmqQx60
一応、僕の疑問は片付いた
嫌な結末だが、終わってしまっているのでどうにもできない
佐藤さんの言うように、あとは僕次第だ
他の人も妙な体験をしているなら、僕だけが逃げ出すのも気弱すぎる
それに良いように利用されたにしろ、正社員として雇用してくれたことに変わりはないし
一番大事なのは僕に異常がなかったこと
嫌な結末だが、終わってしまっているのでどうにもできない
佐藤さんの言うように、あとは僕次第だ
他の人も妙な体験をしているなら、僕だけが逃げ出すのも気弱すぎる
それに良いように利用されたにしろ、正社員として雇用してくれたことに変わりはないし
一番大事なのは僕に異常がなかったこと
96: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 19:53:17.96 ID:UBwmqQx60
ヒト一人が亡くなって、それが暗にリーダーのせいだと解っても本社はリーダーを降格しなかったし、ここを引き上げもしなかった
ということは、佐藤さんが知らない事情があってリーダーが一方的に悪かったわけじゃないのかも
僕はそう解釈した
ということは、佐藤さんが知らない事情があってリーダーが一方的に悪かったわけじゃないのかも
僕はそう解釈した
97: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 20:04:50.41 ID:UBwmqQx60
余談です
思い出すのとメモを読み返すのは思ったよりしんどくて、言葉とか描写を足したり引いたりしてます
小説や嘘に感じてしまった方申し訳ないです
読み返すと僕も小説のように感じます…なんか客観的というか
多分そのほうが書きやすいので
なのでごめんなさい
小説と思う方がいてしまっても仕方ない気がします
思い出すのとメモを読み返すのは思ったよりしんどくて、言葉とか描写を足したり引いたりしてます
小説や嘘に感じてしまった方申し訳ないです
読み返すと僕も小説のように感じます…なんか客観的というか
多分そのほうが書きやすいので
なのでごめんなさい
小説と思う方がいてしまっても仕方ない気がします
99: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 21:46:49.78 ID:UBwmqQx60
僕はその後、一切リーダーにその話を持ちかけなかった
時任さんの言うように僕も関係ないと割り切る事にした
控えめに言ってもここはいい会社だと思う
派遣の人達やアルバイターの若い子達の相談に乗りモチベーションを上げたり、派遣先に満足してもらうのは純粋にやり甲斐があるし
篠原朱音さんにしてもリアルに知らない相手に深い同情は抱けない
詳しく知らないなら尚更だ
時任さんの言うように僕も関係ないと割り切る事にした
控えめに言ってもここはいい会社だと思う
派遣の人達やアルバイターの若い子達の相談に乗りモチベーションを上げたり、派遣先に満足してもらうのは純粋にやり甲斐があるし
篠原朱音さんにしてもリアルに知らない相手に深い同情は抱けない
詳しく知らないなら尚更だ
100: おみくじさん 2022/10/16(日) 21:55:04.00 ID:298FZZOX0
リーダーって会社に入社手引きしてくれた先輩でいいんだよね?
お祓いとかして貰えばいいのに。そんな大ぴらにできないとかいいそうだけど、もうみんな知ってるんでしょ?知らぬふりをしているだけでさ。
お祓いとかして貰えばいいのに。そんな大ぴらにできないとかいいそうだけど、もうみんな知ってるんでしょ?知らぬふりをしているだけでさ。
102: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 22:04:39.92 ID:UBwmqQx60
>>100
リーダーは先輩です
僕もお祓いをすべきだと思いましたし、辞職の話をしたあと一度話してみましたが、心療内科に行けとだけ言われました
僕は実際にその時は色々混乱の極みで
僕がおかしいのかもと実際に思ったりしていてとにかくあそこから逃げたくて堪らなかったんです
だから説得するほど、強くは出られませんでした
あと少しで退社になりますが、また説得した方がいいのでしょうか…
すみません、急に相談してしまいました
リーダーは先輩です
僕もお祓いをすべきだと思いましたし、辞職の話をしたあと一度話してみましたが、心療内科に行けとだけ言われました
僕は実際にその時は色々混乱の極みで
僕がおかしいのかもと実際に思ったりしていてとにかくあそこから逃げたくて堪らなかったんです
だから説得するほど、強くは出られませんでした
あと少しで退社になりますが、また説得した方がいいのでしょうか…
すみません、急に相談してしまいました
101: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/16(日) 21:59:11.64 ID:UBwmqQx60
心霊等と言うものは僕には身近ではないし、ましてそれが理由で辞めるなんて
だから僕は初心を思いだして、先輩や同僚の役に立てるよう仕事に励むことにした
限界を迎えるまでは
だから僕は初心を思いだして、先輩や同僚の役に立てるよう仕事に励むことにした
限界を迎えるまでは
104: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 09:08:44.21 ID:6l6hEGrC0
時々、異常なことが起こった
酷い悪臭がしたり、残業していると食堂から人の声がしたり
他の人達は気にしていない
いや、気づいてるのは僕だけかも
勤めて二年半、僕は完全に自分が信じられなくなってた
今もそうだ
酷い悪臭がしたり、残業していると食堂から人の声がしたり
他の人達は気にしていない
いや、気づいてるのは僕だけかも
勤めて二年半、僕は完全に自分が信じられなくなってた
今もそうだ
109: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 11:26:14.10 ID:6l6hEGrC0
佐藤さんが言うには、ですが
先輩が支社を任されたときに是非にと頼んで来てもらった一人で、若いながらも優秀で真面目な方だったと
本社の上司は支店を任せるなら自分の選んだ部下を連れて行くのが連携を取れていいという考えだったそうで
最初、彼女は本社で学びたいと断っていたそうで、その時に実は前々から好きだったから…とかそんな手で口説いたらしいです(先輩が佐藤さんに直に話したみたいで、僕は眉唾だと思いました)
僕はもちろん知らないし先輩に聞いてもないです
その後、先輩は篠原さんと付き合ったあと本社の女性に乗り換えたらしいです
で、篠原さんが傷心から自殺
本社の女性と上手く行かなくなり別れた…と
だからそもそも支社に有るはずの無い履歴書を見たとき全員がゾッとしていただろうとの事でした
先輩が支社を任されたときに是非にと頼んで来てもらった一人で、若いながらも優秀で真面目な方だったと
本社の上司は支店を任せるなら自分の選んだ部下を連れて行くのが連携を取れていいという考えだったそうで
最初、彼女は本社で学びたいと断っていたそうで、その時に実は前々から好きだったから…とかそんな手で口説いたらしいです(先輩が佐藤さんに直に話したみたいで、僕は眉唾だと思いました)
僕はもちろん知らないし先輩に聞いてもないです
その後、先輩は篠原さんと付き合ったあと本社の女性に乗り換えたらしいです
で、篠原さんが傷心から自殺
本社の女性と上手く行かなくなり別れた…と
だからそもそも支社に有るはずの無い履歴書を見たとき全員がゾッとしていただろうとの事でした
110: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 11:37:14.91 ID:6l6hEGrC0
僕は乗り換えただけで自殺するだろうか、と思いました
僕自体が恋愛に疎いからそう思うのか…
しかも食堂で、なんて…
リーダーは本当に仕事は良く出来る分、厳しいし容赦はしない人
でもフォローはしてくれて励ましてくれる だから同僚も応えようとしている、と感じていた
だから佐藤さんがさも憎々しげにリーダーのせい、みたいに言ったことに僕は正直、話自体に嘘臭さを感じました
その反面、そういう事情なら篠原さんが化けて出てもおかしくはない
その辺りで混乱してました
僕自体が恋愛に疎いからそう思うのか…
しかも食堂で、なんて…
リーダーは本当に仕事は良く出来る分、厳しいし容赦はしない人
でもフォローはしてくれて励ましてくれる だから同僚も応えようとしている、と感じていた
だから佐藤さんがさも憎々しげにリーダーのせい、みたいに言ったことに僕は正直、話自体に嘘臭さを感じました
その反面、そういう事情なら篠原さんが化けて出てもおかしくはない
その辺りで混乱してました
113: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 12:15:48.07 ID:6l6hEGrC0
もう少しあとになりますが、僕はこのときよりもっと混乱する羽目になりました
本当に辛かった時期です…
本当に辛かった時期です…
117: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 12:29:38.53 ID:6l6hEGrC0
ある時、残業があり僕とリーダーだけが残ってしまった
佐藤さんの暴露以来、あまり二人きりになりたくなかった
「お前ももう立派に一人前だな」
唐突に言われて、まごついてしまった
「いや、そんな」
と濁し書類と向き合う
「…あのファイルさ」
またしても、急な話題だ
「お前さ、妙な噂聞いたんだろ 俺とあのファイルの女性との」
まさか先輩からその話題を持ってくるとは思わず、僕は沈黙したまま先輩をじっと見つめた
…なんと答えればいいかわからない
佐藤さんの暴露以来、あまり二人きりになりたくなかった
「お前ももう立派に一人前だな」
唐突に言われて、まごついてしまった
「いや、そんな」
と濁し書類と向き合う
「…あのファイルさ」
またしても、急な話題だ
「お前さ、妙な噂聞いたんだろ 俺とあのファイルの女性との」
まさか先輩からその話題を持ってくるとは思わず、僕は沈黙したまま先輩をじっと見つめた
…なんと答えればいいかわからない
120: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 12:42:27.32 ID:6l6hEGrC0
ここで、僕は佐藤さん側からの話ではなく先輩側の話も聞きたくなった
片方からの話だけで判断したくない
「篠原さんのことですよね、誰からは言えませんが聞きました」
先輩は呆れたように笑って
「どうせ佐藤だろ、あいつ相変わらず俺を嫌ってんだなあ」
笑い顔とはちがい、声は据わっていた
片方からの話だけで判断したくない
「篠原さんのことですよね、誰からは言えませんが聞きました」
先輩は呆れたように笑って
「どうせ佐藤だろ、あいつ相変わらず俺を嫌ってんだなあ」
笑い顔とはちがい、声は据わっていた
121: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 12:58:54.95 ID:6l6hEGrC0
「俺が篠原を振って彼女が自殺した、みたいに伝わっただろ?」
「…正確には、先輩、いやリーダーが本社
に居たかった篠原さんを口説いて付き合ったあと、本社の女性と付き合ってから彼女を振った、と聞きました」
ハッキリ言う事で「本当ですか」と聞いたつもりだ
先輩は机を叩いて「違う!」と言い切った
「…正確には、先輩、いやリーダーが本社
に居たかった篠原さんを口説いて付き合ったあと、本社の女性と付き合ってから彼女を振った、と聞きました」
ハッキリ言う事で「本当ですか」と聞いたつもりだ
先輩は机を叩いて「違う!」と言い切った
122: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 13:09:17.11 ID:6l6hEGrC0
「どうやったらアレがそんな話になるんだよ…俺が篠原に来てもらったんじゃなく、篠原が無理にでも付いてくると言い張ったんだ ずっと俺が好きだったからだと支店を移った時に言われた
俺はゾッとしたよ、そんなことなら断れば良かったってな」
まったく真逆じゃないか
僕は呆然としてしまった
「普通に考えろ 仕事上のマイナスにしかならないだろう恋愛沙汰なんて
だが、諌めても宥めても篠原は俺に付き纏う…貴方の為に本社務めを犠牲にしてって恩着せがましくな」
俺はゾッとしたよ、そんなことなら断れば良かったってな」
まったく真逆じゃないか
僕は呆然としてしまった
「普通に考えろ 仕事上のマイナスにしかならないだろう恋愛沙汰なんて
だが、諌めても宥めても篠原は俺に付き纏う…貴方の為に本社務めを犠牲にしてって恩着せがましくな」
123: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 13:23:48.94 ID:6l6hEGrC0
もう訳が解らなかった
確かに佐藤さんの言い分を信じてはいなかったが、ここまで違うと混乱してくる
そのとき、ばこん、と何か重いものが落ちる音がして
振り向くと、食堂の明かりがついていた
僕らはお互い顔を見合わせて微動だに出来なかった
確かに佐藤さんの言い分を信じてはいなかったが、ここまで違うと混乱してくる
そのとき、ばこん、と何か重いものが落ちる音がして
振り向くと、食堂の明かりがついていた
僕らはお互い顔を見合わせて微動だに出来なかった
131: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 14:17:01.30 ID:6l6hEGrC0
顔を見合わせていると、僕が何かいうより早く
様子を見てくる、と先輩は席を立ってしまった
しかし、真実がどうあれ篠原さんは先輩を恨んでいるのじゃないか?
結局先輩は手に入らなかったんだから
僕は慌てて先輩を追い、先輩がドアから出てきたところでほっとした
「簡易キッチンにあった醤油ボトルが落ちただけ」
そう言って笑った先輩のドアノブを握った手に、清楚なマニキュアを塗った手のひらが重なっていた…優しくではなく、爪を立て、ギリギリと食い込んで
腕の先は食堂の中で、ガラス壁から体は見えない 腕から先がない
先輩は気づかずにドアを閉め、腕は切断されて消えた
様子を見てくる、と先輩は席を立ってしまった
しかし、真実がどうあれ篠原さんは先輩を恨んでいるのじゃないか?
結局先輩は手に入らなかったんだから
僕は慌てて先輩を追い、先輩がドアから出てきたところでほっとした
「簡易キッチンにあった醤油ボトルが落ちただけ」
そう言って笑った先輩のドアノブを握った手に、清楚なマニキュアを塗った手のひらが重なっていた…優しくではなく、爪を立て、ギリギリと食い込んで
腕の先は食堂の中で、ガラス壁から体は見えない 腕から先がない
先輩は気づかずにドアを閉め、腕は切断されて消えた
136: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 17:36:28.07 ID:6l6hEGrC0
「先輩、手が」
え?と自分の手を見るが爪痕はついてなかった
「手がなに?」
いえ、と首をふる
見てないのなら言っても無駄だ
「リーダーの話時任さんや安藤さんも知ってますか?」
話を戻す
「…知ってるよ、相談もしてたしな」
少し間があったが、先輩は悲しい顔でこちらを見た
「お前の判断で構わない とにかく俺は疚しいことはしていない 我儘だが出切れば俺を信じてくれ」
僕ははい、と返事した
実際、僕は仕事上でしか佐藤さんを知らない 先輩は学生時代を知ってるし、深く関わってはいないが誰も先輩を悪く言う人は居なかった
それなら先輩を信じよう、そう決めた
え?と自分の手を見るが爪痕はついてなかった
「手がなに?」
いえ、と首をふる
見てないのなら言っても無駄だ
「リーダーの話時任さんや安藤さんも知ってますか?」
話を戻す
「…知ってるよ、相談もしてたしな」
少し間があったが、先輩は悲しい顔でこちらを見た
「お前の判断で構わない とにかく俺は疚しいことはしていない 我儘だが出切れば俺を信じてくれ」
僕ははい、と返事した
実際、僕は仕事上でしか佐藤さんを知らない 先輩は学生時代を知ってるし、深く関わってはいないが誰も先輩を悪く言う人は居なかった
それなら先輩を信じよう、そう決めた
140: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 17:41:54.96 ID:6l6hEGrC0
僕の立ち位置、つまり先輩を信じると決まったら精神的に大分楽に呼吸できるようになった
誰を信じればいいかわからない曖昧な時こそ気持ちが悪い
僕は幽霊…篠原さんと敵対しても構わないと思ったそんなふうに吹っ切れて気づけば3年と半分、ここで仕事をしていた
誰を信じればいいかわからない曖昧な時こそ気持ちが悪い
僕は幽霊…篠原さんと敵対しても構わないと思ったそんなふうに吹っ切れて気づけば3年と半分、ここで仕事をしていた
142: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 18:27:38.60 ID:6l6hEGrC0
怪異らしいものは相変わらずあった
タイミングよく一斉に電話がなり、出ると無言だったり、リーダーの机からゴキブリが沸いたり
いずれも騒ぎ立てることもなく終わった
今思うとああいった出来事を流してしまうのも怪異だったのでは、と思う
タイミングよく一斉に電話がなり、出ると無言だったり、リーダーの机からゴキブリが沸いたり
いずれも騒ぎ立てることもなく終わった
今思うとああいった出来事を流してしまうのも怪異だったのでは、と思う
144: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 18:45:04.06 ID:6l6hEGrC0
僕は家のなかでも怪異に遭いました
叫ぶほど悍ましかったのは
髪を洗っている最中に、手が増えていた時ですね
髪に手を突っ込んで揉んでいる手のなかに、細みの指がスルリと滑り込んで来たかと思うと僕の手を、恋人繋ぎみたいにしっかり握ってきました
シャンプーが染みるのも構わず目を開けて、浴室を飛び出し泡のて残りはキッチンで落としました
その夜は泣きながら丸くなって寝ました
叫ぶほど悍ましかったのは
髪を洗っている最中に、手が増えていた時ですね
髪に手を突っ込んで揉んでいる手のなかに、細みの指がスルリと滑り込んで来たかと思うと僕の手を、恋人繋ぎみたいにしっかり握ってきました
シャンプーが染みるのも構わず目を開けて、浴室を飛び出し泡のて残りはキッチンで落としました
その夜は泣きながら丸くなって寝ました
147: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 19:04:16.00 ID:6l6hEGrC0
幽霊に興味がある友達も居ないし、両親は遠方
頼れる人もない
はじめて「会社を辞める」という気持ちが本気で湧いていた
このままじゃ、僕はおかしくなる
頼れる人もない
はじめて「会社を辞める」という気持ちが本気で湧いていた
このままじゃ、僕はおかしくなる
149: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 19:25:16.19 ID:6l6hEGrC0
何も無いふりを続けるのも限界で、とうとう僕は先輩を捕まえて
「オフィスを御祓いしてください!」
と直談判した
呆気にとられた先輩はぐいぐい僕を引っ張り、来客用のソファに強引に座らせると
「何をしろって?」と聞いてきた
同じセリフを伝えると、先輩は大袈裟にため息をついた
「オフィスを御祓いしてください!」
と直談判した
呆気にとられた先輩はぐいぐい僕を引っ張り、来客用のソファに強引に座らせると
「何をしろって?」と聞いてきた
同じセリフを伝えると、先輩は大袈裟にため息をついた
151: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 22:14:20.54 ID:6l6hEGrC0
僕は今までの不自然な出来事を訴えた
なるべく冷静に
だけど先輩は黙って聞いたあと
「悪いことはいわないから、心療内科に行ってくれ お前疲れてるんだよ」
「幽霊とか嫌な匂いとか何を言ってる?ゴキブリとかそんなの単に住み着いていただけだろう 他の連中からはそんな心霊話一切来てないぞ
確かにお前は来てからずっと頑張りすぎてて参ってる処に変な噂を聞いてどっと疲れが溜まったんだ
解消するのは義務だ 休みを3日くらい取ってゆっくり医者に見てもらえ」
なるべく冷静に
だけど先輩は黙って聞いたあと
「悪いことはいわないから、心療内科に行ってくれ お前疲れてるんだよ」
「幽霊とか嫌な匂いとか何を言ってる?ゴキブリとかそんなの単に住み着いていただけだろう 他の連中からはそんな心霊話一切来てないぞ
確かにお前は来てからずっと頑張りすぎてて参ってる処に変な噂を聞いてどっと疲れが溜まったんだ
解消するのは義務だ 休みを3日くらい取ってゆっくり医者に見てもらえ」
154: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 22:18:01.97 ID:6l6hEGrC0
心から心配そうにそう言うと先輩は慌ただしくスマホを片手に出て言ってしまった
勇気を出した決断があっさりスルーされてしまって呆然と爪先を見下ろした
僕がおかしいのか?
前に佐藤さんのリアクションでほっとした僕だったが、あれは独りよがりだったのか
勇気を出した決断があっさりスルーされてしまって呆然と爪先を見下ろした
僕がおかしいのか?
前に佐藤さんのリアクションでほっとした僕だったが、あれは独りよがりだったのか
155: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 22:21:46.47 ID:6l6hEGrC0
そもそも佐藤さんは自分も見た、感じた、なんて言ったか?
ぐんぐん疑心暗鬼…自分の正気を疑ってくる
考えたら昔にそんな事はなかった
幽霊なんて見たことがなかった
なのに、ここに来てから急に見始めるなんておかしいじゃないか
しっかりしろ、どうかしてるぞ
ぐんぐん疑心暗鬼…自分の正気を疑ってくる
考えたら昔にそんな事はなかった
幽霊なんて見たことがなかった
なのに、ここに来てから急に見始めるなんておかしいじゃないか
しっかりしろ、どうかしてるぞ
156: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/17(月) 22:30:25.08 ID:6l6hEGrC0
キッと睨むようにソファに座ったまま、テーブルを見据えると
女の顔が映っていた
反射、じゃない
僕の「側」だ
向かいに映っているんじゃない
僕としっかり目を合わせている
なんだ、こいつは
笑っている
僕は叫び出したかった
だが、それこそがこいつが望んでいるように思った
我慢して我慢して立ち上がる
真横のソファに座っている女がいる
膝に顔をつけるくらい前屈みの女
見下ろすと首筋で黒髪が左右に割れていて青白いうなじが見えた
女の顔が映っていた
反射、じゃない
僕の「側」だ
向かいに映っているんじゃない
僕としっかり目を合わせている
なんだ、こいつは
笑っている
僕は叫び出したかった
だが、それこそがこいつが望んでいるように思った
我慢して我慢して立ち上がる
真横のソファに座っている女がいる
膝に顔をつけるくらい前屈みの女
見下ろすと首筋で黒髪が左右に割れていて青白いうなじが見えた
159: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 00:03:13.39 ID:jwnz7tny0
「篠原さん、もうやめて下さい
僕につきまとわれても困ります」
僕につきまとわれても困ります」
161: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 00:12:14.70 ID:jwnz7tny0
もう限界だった
なぜ先輩に出ない?
目の前に出ろ!言いたいことを言ってやれ
僕に出てくるな!
先輩に恨みをぶつけやがれ!
その気持ちをぶつけた
冷静に、周りに聞こえないよう静かに
彼女は不自然なくらい動かない
なぜ先輩に出ない?
目の前に出ろ!言いたいことを言ってやれ
僕に出てくるな!
先輩に恨みをぶつけやがれ!
その気持ちをぶつけた
冷静に、周りに聞こえないよう静かに
彼女は不自然なくらい動かない
162: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 00:29:07.36 ID:jwnz7tny0
僕は彼女に構わず、廊下に飛び出し先輩に休みを告げた
先輩はホッとして「気にするな、ゆっくりしたあとまだ不安が有るようならまた休んだらいい」
病院に行く約束をしたが、それは最終日にいく
まずは御祓いに行くつもりだ
もう意地を張らずにアレが居ることを認める
そして自衛する
先輩はホッとして「気にするな、ゆっくりしたあとまだ不安が有るようならまた休んだらいい」
病院に行く約束をしたが、それは最終日にいく
まずは御祓いに行くつもりだ
もう意地を張らずにアレが居ることを認める
そして自衛する
166: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 00:48:03.37 ID:jwnz7tny0
人の賑わうマックの窓際の席につき、お祓いを密にやってくれる場所を探した
知恵袋やオカルトサイトでもお勧めの神社を必死に探した
祓って貰えた、という口コミの多い神社に決め、さっさと予約する
長年の患いが洗い流されたような心地がした
また予約の段階でも、光が見えた気がした
知恵袋やオカルトサイトでもお勧めの神社を必死に探した
祓って貰えた、という口コミの多い神社に決め、さっさと予約する
長年の患いが洗い流されたような心地がした
また予約の段階でも、光が見えた気がした
169: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 01:07:31.50 ID:jwnz7tny0
予約があっさり出来たこともあって、その日は友人達と久々に飲みに行ったりして楽しかった
その反動で、誰も居ない部屋に戻るのは苦痛で暗くなりがちな気を引き締めた
今日ついでに調べたが気弱だとアレらの思う壺らしい
むしろこちらから倒してやる!くらいの意気込みが必要らしい
その反動で、誰も居ない部屋に戻るのは苦痛で暗くなりがちな気を引き締めた
今日ついでに調べたが気弱だとアレらの思う壺らしい
むしろこちらから倒してやる!くらいの意気込みが必要らしい
172: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 01:21:42.58 ID:jwnz7tny0
だから風呂場では敢えて浸かって、一人で時々
「来てみろよー!」
とか
「卑怯者ー!」
「あっち行けー!」
とか叫んでみた
さらに塩を風呂に入れたり、塩でうがいしたり、塩で体を洗ったりした
今思うと御祓いできることでテンションが上がりまくっていたのだろう
「来てみろよー!」
とか
「卑怯者ー!」
「あっち行けー!」
とか叫んでみた
さらに塩を風呂に入れたり、塩でうがいしたり、塩で体を洗ったりした
今思うと御祓いできることでテンションが上がりまくっていたのだろう
182: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 14:09:29.90 ID:jwnz7tny0
御祓いは恙無く終了し、僕は体が軽くなったような気がして御札を頂いたあと一礼して鳥居を潜り抜けていた
ただ、失望したのは密に御祓いをしてくれる、というのは祓う時間が長いということで事情を詳しく聞いてくれる訳ではないということだ
だからこれで居なくなったのだ、という実感は湧いてこない
体が軽くなったのは神主さんの美声が体を通り抜けてあたかも自分が昇天してしまったように感じたにすぎない
だから御札とは別に御守りも買って万全を期したつもりだ
ただ、失望したのは密に御祓いをしてくれる、というのは祓う時間が長いということで事情を詳しく聞いてくれる訳ではないということだ
だからこれで居なくなったのだ、という実感は湧いてこない
体が軽くなったのは神主さんの美声が体を通り抜けてあたかも自分が昇天してしまったように感じたにすぎない
だから御札とは別に御守りも買って万全を期したつもりだ
183: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 14:14:47.85 ID:jwnz7tny0
家に入った途端、空気が重い
気の所為じゃなく伸し掛かるような湿度…水気を感じた
慌てて御札を一番奥、僕のベッドの上辺りに貼る
浴室にも、キッチンにも
そして玄関のドアを開けた
昨日調べた時に誰かが御札は逆に閉じ込める時もあるから、出入り口は塞いではだめ
と書いていたからだ
さらに御守りは麻紐を繋いで輪を大きくし、首から下げた
気の所為じゃなく伸し掛かるような湿度…水気を感じた
慌てて御札を一番奥、僕のベッドの上辺りに貼る
浴室にも、キッチンにも
そして玄関のドアを開けた
昨日調べた時に誰かが御札は逆に閉じ込める時もあるから、出入り口は塞いではだめ
と書いていたからだ
さらに御守りは麻紐を繋いで輪を大きくし、首から下げた
184: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 14:18:23.03 ID:jwnz7tny0
この光景を誰かが見たら僕の気が違ったようにみえるだろうな、とぼんやり考えていた
そして膝を抱えて床にじっと座っていた
これが14時
何度か瞬きしてみると、辺りは真っ暗になっていた
そして膝を抱えて床にじっと座っていた
これが14時
何度か瞬きしてみると、辺りは真っ暗になっていた
185: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 14:21:28.70 ID:jwnz7tny0
は?
なんで暗い
呆気に取られて立ち上がろうとしても動かない
指一つ動かない
目線は動かせる
異様だ
真っ暗ななかに座ったまま動かないなんて
固まっていると、玄関から女が入ってきた
なんで暗い
呆気に取られて立ち上がろうとしても動かない
指一つ動かない
目線は動かせる
異様だ
真っ暗ななかに座ったまま動かないなんて
固まっていると、玄関から女が入ってきた
186: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 14:30:25.99 ID:jwnz7tny0
細い首の両側から流れる黒髪
白というより蒼ざめた肌
僕にまっすぐ近づく
ぺたんと目の前に座り、僕を見てくる
僕は目を瞑ることが出来ない
あの時の怒りがいきなり再燃した
「…出て行け!篠原、僕の家から!」
声が出た
目の前の女が、黒髪で隠れていた顔を上げた
大きくて真っ黒な口が笑った
「そうぇ だえぇ?」
言葉の意味が解った時、僕は意識が飛んで
気づいたのは朝だった
白というより蒼ざめた肌
僕にまっすぐ近づく
ぺたんと目の前に座り、僕を見てくる
僕は目を瞑ることが出来ない
あの時の怒りがいきなり再燃した
「…出て行け!篠原、僕の家から!」
声が出た
目の前の女が、黒髪で隠れていた顔を上げた
大きくて真っ黒な口が笑った
「そうぇ だえぇ?」
言葉の意味が解った時、僕は意識が飛んで
気づいたのは朝だった
189: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:13:51.85 ID:jwnz7tny0
身体がガチガチに軋む
身体中がしっとりと湿っている
眠って起きた時の気だるさが微塵もない
昨日のアイツの言葉がよぎって、関節が悲鳴を挙げるのも構わず膝をつき、立ち上がった
頭は床の接面部が痛いものの、中身は冴えていた
故に、僕は改めて愕然としていた
身体中がしっとりと湿っている
眠って起きた時の気だるさが微塵もない
昨日のアイツの言葉がよぎって、関節が悲鳴を挙げるのも構わず膝をつき、立ち上がった
頭は床の接面部が痛いものの、中身は冴えていた
故に、僕は改めて愕然としていた
190: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:16:10.18 ID:jwnz7tny0
「そうぇ だえぇ?」
それ 誰?
アレはそう言った
僕はその前に「篠原」と名前を呼んだ
嘘だ、アレが篠原じゃない?
じゃあ何なんだ、そんなことがあるもんか、だって
それ 誰?
アレはそう言った
僕はその前に「篠原」と名前を呼んだ
嘘だ、アレが篠原じゃない?
じゃあ何なんだ、そんなことがあるもんか、だって
191: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:19:22.18 ID:jwnz7tny0
それともう1つ気づいた
御祓いなどなんの役にも立たなかった
首にかけていたお守りを握ると、水が滴った
なぜかたっぷりと水を含んでいた
御祓いなどなんの役にも立たなかった
首にかけていたお守りを握ると、水が滴った
なぜかたっぷりと水を含んでいた
193: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:27:32.07 ID:jwnz7tny0
昨日あれほど身が軽く感じたのは「気はこころ」であり「プラシーボ効果」だったのか
もう嫌だ
意味が解らないなんてものじゃない
正体が解らないものにたちむかえる訳がない
もう嫌だ
意味が解らないなんてものじゃない
正体が解らないものにたちむかえる訳がない
195: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:33:38.20 ID:jwnz7tny0
僕は心霊を調べている最中にしばしば目についた「霊能者」に相談しよう、と決めた
最後の手段だ、と
前の僕なら胡散臭いと一蹴していた
でももしも、アイツが僕から離れてくれたら…幾らだって払う
心からの感謝で払う
僕は先輩に電話して、あと一週間下さいと頼んだ
先輩は僕の声音に圧倒されたように、「本社にヘルプを頼むから気にしないでいい」
と言ってくれた
最後の手段だ、と
前の僕なら胡散臭いと一蹴していた
でももしも、アイツが僕から離れてくれたら…幾らだって払う
心からの感謝で払う
僕は先輩に電話して、あと一週間下さいと頼んだ
先輩は僕の声音に圧倒されたように、「本社にヘルプを頼むから気にしないでいい」
と言ってくれた
197: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:43:01.01 ID:jwnz7tny0
かつてないくらい必死になって情報を探した
除霊師を探した
色んな人がいた
占い師みたいに飾り立てた人は避け、さらに法外な金額を要求する人も避けた
払うのは構わない、だが詐欺師に頼むのはごめんだ
遠方からパワーやらなんかを捧げて祓う人も、避けた
僕と直に会ってくれて、部屋を見て、その時点で聞いたことに答えてくれる…そんな人を望み
ずっとマックでパソコンをいじり続けた
除霊師を探した
色んな人がいた
占い師みたいに飾り立てた人は避け、さらに法外な金額を要求する人も避けた
払うのは構わない、だが詐欺師に頼むのはごめんだ
遠方からパワーやらなんかを捧げて祓う人も、避けた
僕と直に会ってくれて、部屋を見て、その時点で聞いたことに答えてくれる…そんな人を望み
ずっとマックでパソコンをいじり続けた
199: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:47:08.35 ID:jwnz7tny0
そんななか、ひとつの情報が目を惹いた
「この方は本物です
とても親身になって聞いて下さいました 悩んでいるなら相談するべきです」
とありふれた推薦が付けられていたけど、何故か目が離せなかった
優しそうなおばさんだ
55、年齢が書かれている
似たような人は沢山いたのに、僕は電話番号を書き記していた
「この方は本物です
とても親身になって聞いて下さいました 悩んでいるなら相談するべきです」
とありふれた推薦が付けられていたけど、何故か目が離せなかった
優しそうなおばさんだ
55、年齢が書かれている
似たような人は沢山いたのに、僕は電話番号を書き記していた
200: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/18(火) 17:51:48.74 ID:jwnz7tny0
もし偽物だったら、と疑う事もせず僕は家に着くと電話をかけ暫く待っていた
「おまたせしました」
その声を聞いた瞬間から泣いていた
号泣、というのを人生初、体験した
言葉も出ずに馬鹿みたいに泣いてる僕に、彼女は
「可哀想に、怖かったですね」
と話していた
「おまたせしました」
その声を聞いた瞬間から泣いていた
号泣、というのを人生初、体験した
言葉も出ずに馬鹿みたいに泣いてる僕に、彼女は
「可哀想に、怖かったですね」
と話していた
210: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 08:27:56.45 ID:sMgvtm+D0
僕がひとしきり泣いて興奮が収まると橘さん(除霊師)は穏やかに話を始めた
「貴方、ここ3日以内に神社…かなりの力のある神主さんに祓って頂きましたね…ギリギリでした いえ、本当に良かったです」
「でもその日にアイツは僕の処に来たのです」
スマホの向こうで、橘さんが微笑んだように感じた
「貴方の周りにある加護のお陰で、貴方は彼女に触れられなかったのです
もしも触れていたら、貴方は今、此処に居なかったでしょう」
「貴方、ここ3日以内に神社…かなりの力のある神主さんに祓って頂きましたね…ギリギリでした いえ、本当に良かったです」
「でもその日にアイツは僕の処に来たのです」
スマホの向こうで、橘さんが微笑んだように感じた
「貴方の周りにある加護のお陰で、貴方は彼女に触れられなかったのです
もしも触れていたら、貴方は今、此処に居なかったでしょう」
211: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 08:32:40.73 ID:sMgvtm+D0
「確かに祓うまでは出来なかったにしてもそれは仕方ないでしょうね、貴方に執着している霊は今は最初のと合わせて3体分になってしまっています」
絶句。
驚いて黙ってしまった
「とにかく、そちらへ行きましょう
一刻を争います」
僕は見えもしないのに頷いた
絶句。
驚いて黙ってしまった
「とにかく、そちらへ行きましょう
一刻を争います」
僕は見えもしないのに頷いた
212: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 08:45:54.84 ID:sMgvtm+D0
橘さんの姿を見たとき、またしても涙が込み上げた
なんの涙かはわからない
安心感に体ごと包まれたような暖かさが僕を労ってくれている
見た瞬間に、橘さんは普通のひととはまるで違う
他の人より数段明るいのだ
影さすところの無い、存在感が明るい
なんの涙かはわからない
安心感に体ごと包まれたような暖かさが僕を労ってくれている
見た瞬間に、橘さんは普通のひととはまるで違う
他の人より数段明るいのだ
影さすところの無い、存在感が明るい
213: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 08:53:24.03 ID:sMgvtm+D0
「初めまして
よく私を信じてくださいましたね
ありがとう」
頭を下げる橘さんに僕はとんでもないと頭を下げ返した
「貴方の家へ行きましょう」
橘さんは説明もしていないのに僕のアパートの方向へ迷い無く進む
不思議に思うと
「家と貴方は密接につながっています
それは誰しも同じこと
貴方と共にいる方々の思いも密に残ります 嫌なことを言えば、貴方は既にがんじがらめにされているのです」
というような言葉を言われた
「私が行くことで、貴方の家と私も繋がります なので遠くに居ても状況がより良く解るようになります」
よく私を信じてくださいましたね
ありがとう」
頭を下げる橘さんに僕はとんでもないと頭を下げ返した
「貴方の家へ行きましょう」
橘さんは説明もしていないのに僕のアパートの方向へ迷い無く進む
不思議に思うと
「家と貴方は密接につながっています
それは誰しも同じこと
貴方と共にいる方々の思いも密に残ります 嫌なことを言えば、貴方は既にがんじがらめにされているのです」
というような言葉を言われた
「私が行くことで、貴方の家と私も繋がります なので遠くに居ても状況がより良く解るようになります」
215: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:11:01.98 ID:sMgvtm+D0
アパートの、僕の部屋の前に立つと
「鍵を貸してください」
と言って橘さんは手を差し出した
それから何か呟いて鍵を開ける
「今まで数々見てきましたが」
とつぶやく
「こんなにベタベタした空気はなかなかお目にかかりません」
「失礼します」
橘さんがいると、空気が間違いなく軽く感じた
「鍵を貸してください」
と言って橘さんは手を差し出した
それから何か呟いて鍵を開ける
「今まで数々見てきましたが」
とつぶやく
「こんなにベタベタした空気はなかなかお目にかかりません」
「失礼します」
橘さんがいると、空気が間違いなく軽く感じた
216: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:15:32.29 ID:sMgvtm+D0
それから、応接間で今まであった話を全て話した
省略してはいけない、と言われて僕の折々に感じた気持ちも誤魔化さず話きった
話し終わると2時間は悠に経っていた
橘さんは背筋を真っすぐに聞いてくれて
一言も口を挟まず真剣に時折頷くだけだった
「わかりました、お話をありがとうございます
あらかた、わかりました」
省略してはいけない、と言われて僕の折々に感じた気持ちも誤魔化さず話きった
話し終わると2時間は悠に経っていた
橘さんは背筋を真っすぐに聞いてくれて
一言も口を挟まず真剣に時折頷くだけだった
「わかりました、お話をありがとうございます
あらかた、わかりました」
217: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:21:01.66 ID:sMgvtm+D0
「結論から言えば、貴方には3体分の思いがついています
それはさぞ苦しく重かったでしょうね
一人は貴方が思っている通り
篠原朱音さんです
もう一人は生き霊
佐藤百合子さん
もう一人は
関谷良子さん」
「佐藤さん?まさか、なぜ…
最後の人も知りません!
どういう…」
それはさぞ苦しく重かったでしょうね
一人は貴方が思っている通り
篠原朱音さんです
もう一人は生き霊
佐藤百合子さん
もう一人は
関谷良子さん」
「佐藤さん?まさか、なぜ…
最後の人も知りません!
どういう…」
218: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:27:42.55 ID:sMgvtm+D0
橘さんは悲しそうに話しだした
「関谷さんに関しては知らなくて当然です
彼女は、非常に強い存在に取り込まれた人です
彼女自身も辛い過去があって、佐藤さんに共鳴しただけでしょう」
阿呆みたいに黙ったままの僕に橘さんは優しく続ける
「佐藤百合子さんは貴方の同僚ですね
最初に篠原さんの事を話した方
此の方の生き霊が貴方を傷つけたくてたまらないようです
寧ろ、篠原さんは貴方に恋をしていますよ
彼女は…とても、惚れやすい質の様ですね」
「関谷さんに関しては知らなくて当然です
彼女は、非常に強い存在に取り込まれた人です
彼女自身も辛い過去があって、佐藤さんに共鳴しただけでしょう」
阿呆みたいに黙ったままの僕に橘さんは優しく続ける
「佐藤百合子さんは貴方の同僚ですね
最初に篠原さんの事を話した方
此の方の生き霊が貴方を傷つけたくてたまらないようです
寧ろ、篠原さんは貴方に恋をしていますよ
彼女は…とても、惚れやすい質の様ですね」
220: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:34:58.83 ID:sMgvtm+D0
「何がなんだかわかりません
佐藤さんに恨まれるようなこと…」
食堂での憎々しげな言い草、目つき、あれは僕に対してだったのか?
わからない
意味が全然わからない
佐藤さんに恨まれるようなこと…」
食堂での憎々しげな言い草、目つき、あれは僕に対してだったのか?
わからない
意味が全然わからない
221: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:38:10.57 ID:sMgvtm+D0
橘さんはええ、普通なら恨まれる筋合いはないですねと言った
「ですが、誤解を恐れずに言わせて頂くと
佐藤百合子さんは「普通」ではありません
異常に妬み、嫉妬の感情の強い方
この方は信じられないくらい嫉妬が強い…
貴方の先輩に近づくものは男女構わずに憎いのです」
「ですが、誤解を恐れずに言わせて頂くと
佐藤百合子さんは「普通」ではありません
異常に妬み、嫉妬の感情の強い方
この方は信じられないくらい嫉妬が強い…
貴方の先輩に近づくものは男女構わずに憎いのです」
223: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:41:36.76 ID:sMgvtm+D0
「先輩ですか?」
もう立て続けに爆弾を落とされている様
なんだ、これは現実か?
「多いですよ 全て自分のものにしたい方が
行き過ぎると魂は身体から離れて行きます」
もう立て続けに爆弾を落とされている様
なんだ、これは現実か?
「多いですよ 全て自分のものにしたい方が
行き過ぎると魂は身体から離れて行きます」
224: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:54:21.42 ID:sMgvtm+D0
「ですが、貴方の先輩はお話を聞いただけでも解る頑なな「現実主義」であり、さらに非常に強い守護…霊、というより守護神がついていらっしゃり、念が近寄れる相手ではありません
だから篠原さんも望みない恋より、隙のある…あらごめんなさいね、疲れて大変な貴方にアピールし始めたのでしょう」
「佐藤さんに関しては、これは厄介ですね」
だから篠原さんも望みない恋より、隙のある…あらごめんなさいね、疲れて大変な貴方にアピールし始めたのでしょう」
「佐藤さんに関しては、これは厄介ですね」
225: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 09:59:30.14 ID:sMgvtm+D0
橘さんは言いにくそうに
「あの、大変失礼ですが、その
佐藤さんは女性の魅力に乏しい方でしょう、見目形の話ですが」
佐藤さんは…固太りしていて身長は低く、顔立ちも…そう、魅力となると乏しいとしか言えない
それで愛嬌もないのだから、仕方ない
言われるまで僕も彼女を女性として意識したことなど皆無だった
「あの、大変失礼ですが、その
佐藤さんは女性の魅力に乏しい方でしょう、見目形の話ですが」
佐藤さんは…固太りしていて身長は低く、顔立ちも…そう、魅力となると乏しいとしか言えない
それで愛嬌もないのだから、仕方ない
言われるまで僕も彼女を女性として意識したことなど皆無だった
226: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 10:02:42.14 ID:sMgvtm+D0
「彼女は激しく貴方の先輩を恋い焦がれています
人を殺しかねないくらい
でも見向きもされない
だから、猪突猛進方の篠原さんが死んだあとも憎かった
もちろん無意識なんですが、余りの嫉妬心で篠原さんをほぼ飲み込んでしまったあと、矛先を貴方に向けた」
人を殺しかねないくらい
でも見向きもされない
だから、猪突猛進方の篠原さんが死んだあとも憎かった
もちろん無意識なんですが、余りの嫉妬心で篠原さんをほぼ飲み込んでしまったあと、矛先を貴方に向けた」
227: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 10:08:52.31 ID:sMgvtm+D0
「先輩さんが言ったことは正しいですよ、彼は篠原さんどころか女性に興味がありません
…あ、同性愛者でもないですよ
彼の意識は仕事中心なんですね
篠原さんが言うには今は貴方が好きで仕方ないんだそう
履歴書でアピールしたのも、そういうことです」
先輩ならそうだろう
僕は関係ない恋愛事情に巻き込まれただけなのか?
「にしても男の僕に嫉妬するなんて異常じゃないですか?」
橘さんは真顔で言った
「ええ、もちろん
佐藤百合子さんは異常ですよ」
と
…あ、同性愛者でもないですよ
彼の意識は仕事中心なんですね
篠原さんが言うには今は貴方が好きで仕方ないんだそう
履歴書でアピールしたのも、そういうことです」
先輩ならそうだろう
僕は関係ない恋愛事情に巻き込まれただけなのか?
「にしても男の僕に嫉妬するなんて異常じゃないですか?」
橘さんは真顔で言った
「ええ、もちろん
佐藤百合子さんは異常ですよ」
と
238: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:00:28.71 ID:sMgvtm+D0
「異常…ですか」
確かに愛嬌は無かったが異常と言われるほどの何かを感じさせるものはなかった
「ええ
貴方に先輩さんの嘘の過去を教えたのは、貴方が彼を嫌いにさせる為、つまりお二人の関係にヒビを入れたかったから
実際、貴方は少し、彼の人格に不安を覚えたのじゃないかしら
けれど、佐藤さんより貴方は彼の人となりを知っていたので、結果彼を信じて普段と変わらなく接した」
その通りだ
僕は佐藤さんより先輩を信じた
確かに愛嬌は無かったが異常と言われるほどの何かを感じさせるものはなかった
「ええ
貴方に先輩さんの嘘の過去を教えたのは、貴方が彼を嫌いにさせる為、つまりお二人の関係にヒビを入れたかったから
実際、貴方は少し、彼の人格に不安を覚えたのじゃないかしら
けれど、佐藤さんより貴方は彼の人となりを知っていたので、結果彼を信じて普段と変わらなく接した」
その通りだ
僕は佐藤さんより先輩を信じた
239: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:07:26.29 ID:sMgvtm+D0
このとき、バシッと音がした
次に何かが割れる
キッチンに不穏な気配がする
「あら、言われたくないことを私がどんどん言うものだから怒ってしまったのねえ、でも私は辞めませんよ」
氷の様に冷たい声で続ける
「精神が醜い人はいるものよ
自分が愛されないのは見目形の問題じゃないわ
心が歪なの
佐藤さん、貴方の愛し方は我儘
愛を請わず、憎しみの形にして相手にぶつけ、相手に疎まれると何故気づいてくれないのと逆恨み
誰だってね、睨まれたり憎まれ口を叩く人を好きにはならないの」
次に何かが割れる
キッチンに不穏な気配がする
「あら、言われたくないことを私がどんどん言うものだから怒ってしまったのねえ、でも私は辞めませんよ」
氷の様に冷たい声で続ける
「精神が醜い人はいるものよ
自分が愛されないのは見目形の問題じゃないわ
心が歪なの
佐藤さん、貴方の愛し方は我儘
愛を請わず、憎しみの形にして相手にぶつけ、相手に疎まれると何故気づいてくれないのと逆恨み
誰だってね、睨まれたり憎まれ口を叩く人を好きにはならないの」
240: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:14:25.82 ID:sMgvtm+D0
「だから結果はどうあれ、先輩さんに付き纏い挙げ句に自殺をしてある意味では永遠に心に残る形になった篠原さんが羨ましくて憎い
その思いが貴方の生き霊を解放し、篠原さんを食べてしまった
でも大誤算だったわね
まさか篠原さんが僕さんを好きになっていたなんて
だから期待した僕さんへの仕打ちも履歴書を見せたり、髪を洗ってあげたり自分をアピールするだけの他愛のないものになってしまったなんて」
その思いが貴方の生き霊を解放し、篠原さんを食べてしまった
でも大誤算だったわね
まさか篠原さんが僕さんを好きになっていたなんて
だから期待した僕さんへの仕打ちも履歴書を見せたり、髪を洗ってあげたり自分をアピールするだけの他愛のないものになってしまったなんて」
241: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:17:46.94 ID:sMgvtm+D0
橘さんは僕に話してない
佐藤さんの生き霊に話している
「篠原さんは好きが講じて貴方が出ようとするのを、命を奪おうとするのを抑えていたのね
ところが由緒正しい神社にて彼女は祓われて力を無くしてしまった
まだ、居るけれどもう貴方を抑えられない
だから、貴方はチャンスとばかりに彼を狙った」
佐藤さんの生き霊に話している
「篠原さんは好きが講じて貴方が出ようとするのを、命を奪おうとするのを抑えていたのね
ところが由緒正しい神社にて彼女は祓われて力を無くしてしまった
まだ、居るけれどもう貴方を抑えられない
だから、貴方はチャンスとばかりに彼を狙った」
242: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:22:10.59 ID:sMgvtm+D0
「執念深さも此処に極まれり、だわ
生き霊はいつも死者よりも強いけれど貴女は相当よ
貴女自身に話しても効果は薄いでしょうね
私は私の依頼者を救う
あなたは間違っている」
彼女はニッコリし僕に彼女、佐藤百合子さんを頭に描くようにいった
しっかり、写真のように
そうしながら目を瞑るようにと
生き霊はいつも死者よりも強いけれど貴女は相当よ
貴女自身に話しても効果は薄いでしょうね
私は私の依頼者を救う
あなたは間違っている」
彼女はニッコリし僕に彼女、佐藤百合子さんを頭に描くようにいった
しっかり、写真のように
そうしながら目を瞑るようにと
243: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:28:32.09 ID:sMgvtm+D0
「もういいですよ?」
の声に目を開いた
…明るい
この部屋はこんなに明るかったのか?
常に感じていた重たい湿気も全くない
空気が清浄だ
「一旦、収まりました…あ、悲しい顔をしないで
といってももう此処に悪さは出来ないでしょうから」
一旦の言葉に顔色をなくした僕を橘さんは慰める
の声に目を開いた
…明るい
この部屋はこんなに明るかったのか?
常に感じていた重たい湿気も全くない
空気が清浄だ
「一旦、収まりました…あ、悲しい顔をしないで
といってももう此処に悪さは出来ないでしょうから」
一旦の言葉に顔色をなくした僕を橘さんは慰める
244: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:36:07.74 ID:sMgvtm+D0
「真剣に聞いてください
これから一週間
陽当りのいい場所に日本酒を備え、鮮度のいい鶏肉、部位はなんでも構いませんから…をお猪口とお皿に入れ感謝をお伝えください
私の守護神はお狐様でシャンと言う御名をお持ちです
御名を口にはせず、頭の中だけで名を描き感謝を毎日お伝え下さいね」
「必ず実行してください
私の御使い様は必ず力を授けて下さるかわりに、礼儀知らずには恐ろしい報いをお与えになられるので」
「御神酒と鶏は必ず毎日新しいものを」
僕はメモに書き残した
「それから…」
これから一週間
陽当りのいい場所に日本酒を備え、鮮度のいい鶏肉、部位はなんでも構いませんから…をお猪口とお皿に入れ感謝をお伝えください
私の守護神はお狐様でシャンと言う御名をお持ちです
御名を口にはせず、頭の中だけで名を描き感謝を毎日お伝え下さいね」
「必ず実行してください
私の御使い様は必ず力を授けて下さるかわりに、礼儀知らずには恐ろしい報いをお与えになられるので」
「御神酒と鶏は必ず毎日新しいものを」
僕はメモに書き残した
「それから…」
245: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:41:01.16 ID:sMgvtm+D0
橘さんは厳しく付け加えた
「佐藤さんは消せませんが弱める事が出来ました
あなたへの執着は消えかかった炎です
これからは直には会いに来ないでしょうが
時折、夢の中だけ来るでしょう
私の加護が貴方に働きかけ、その時貴方の目は見えません
そのままにして下さい
決して見たいと思わないように
次に彼女と目が合えば貴方は現世にかえれない
気が触れてしまうでしょう」
「佐藤さんは消せませんが弱める事が出来ました
あなたへの執着は消えかかった炎です
これからは直には会いに来ないでしょうが
時折、夢の中だけ来るでしょう
私の加護が貴方に働きかけ、その時貴方の目は見えません
そのままにして下さい
決して見たいと思わないように
次に彼女と目が合えば貴方は現世にかえれない
気が触れてしまうでしょう」
246: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:44:43.50 ID:sMgvtm+D0
不安げな僕に橘さんは大丈夫、と微笑んだ
「大丈夫、見ないようにとの意識は都度、思い出しますから
一旦、というのはそういうわけです
夢に出ても恐れなくていいですからね」
橘さんの言葉は安心をくれた
僕は休み明けに者を辞めることにした
もう決めたのだ
「大丈夫、見ないようにとの意識は都度、思い出しますから
一旦、というのはそういうわけです
夢に出ても恐れなくていいですからね」
橘さんの言葉は安心をくれた
僕は休み明けに者を辞めることにした
もう決めたのだ
247: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 14:59:11.22 ID:sMgvtm+D0
帰り際、橘さんは
「貴方の見たものは3体の融合体でしたから、もう見ないです
篠原さんと巻き込まれただけの可哀想な方は(関谷さん)御帰り頂きましたから
そして佐藤さんも夢で来るのが精一杯です
この話は御本人には言わないように
かのは無意識の悪意ですから」
そして交通費とこれ以上は絶対に受け取りません、と謝礼の一万円だけ手にして帰ってしまった
「貴方の見たものは3体の融合体でしたから、もう見ないです
篠原さんと巻き込まれただけの可哀想な方は(関谷さん)御帰り頂きましたから
そして佐藤さんも夢で来るのが精一杯です
この話は御本人には言わないように
かのは無意識の悪意ですから」
そして交通費とこれ以上は絶対に受け取りません、と謝礼の一万円だけ手にして帰ってしまった
248: 本当にあった怖い名無し 2022/10/19(水) 15:21:24.17 ID:I0ZYr8bO0
佐藤さんとどう接すればいいんだろう
250: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 15:56:53.27 ID:sMgvtm+D0
>>248
決めかねました
正直、何か言ってやりたい気持ちもあり
最後まで悩みましたね
決めかねました
正直、何か言ってやりたい気持ちもあり
最後まで悩みましたね
251: 本当にあった怖い名無し 2022/10/19(水) 15:59:38.14 ID:I0ZYr8bO0
>>250
言っていいと思うよ?
もっと、考えを口に出したらどうですか?とか。
駄目かな。
人の思念が場所に残ってしまうのは残念だね。そんなのを気にせず生きて行きたいが。
言っていいと思うよ?
もっと、考えを口に出したらどうですか?とか。
駄目かな。
人の思念が場所に残ってしまうのは残念だね。そんなのを気にせず生きて行きたいが。
255: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 16:10:17.76 ID:sMgvtm+D0
>>251
ありがとう
大丈夫です、自分なりに佐藤さんにお伝えしました
もう僕はそれでスッキリしています
ありがとう
大丈夫です、自分なりに佐藤さんにお伝えしました
もう僕はそれでスッキリしています
249: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 15:56:01.46 ID:sMgvtm+D0
閑話休題
不安があると困るでしょう、と橘さんはLINEを交換してくれていたから、ご迷惑と知りつつLINEでなぜあんな金額で見てくれたのかを教えて頂いた
理由は
徳を高める努力をしないと御使い様に見放されてしまうから
と絵文字入りのご返信があった
電話だけで、その人の真実が解るので嘘や思い込みの電話にはそもそも出ないらしい
通りで、口コミには
いつも出ない、とか書かれていた筈だ
出て頂けて本当に良かったです
不安があると困るでしょう、と橘さんはLINEを交換してくれていたから、ご迷惑と知りつつLINEでなぜあんな金額で見てくれたのかを教えて頂いた
理由は
徳を高める努力をしないと御使い様に見放されてしまうから
と絵文字入りのご返信があった
電話だけで、その人の真実が解るので嘘や思い込みの電話にはそもそも出ないらしい
通りで、口コミには
いつも出ない、とか書かれていた筈だ
出て頂けて本当に良かったです
259: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 18:26:43.50 ID:sMgvtm+D0
結局、一週間ほど休み会社に戻った
先輩はとても嬉しげに迎えてくれ、他の同僚もそれぞれに大丈夫なのか?と声をかけてくれる
先輩は復帰の前日に
「たちの悪い風邪をひいたことにしたからな」
と言ってくれた
僕は笑顔で一週間分の引き継ぎをしてくれる先輩の肩越しに佐藤さんと目が合った
彼女の目が一瞬、白目まで塗りつぶされた黒い穴の様に見え鳥肌が立った
先輩はとても嬉しげに迎えてくれ、他の同僚もそれぞれに大丈夫なのか?と声をかけてくれる
先輩は復帰の前日に
「たちの悪い風邪をひいたことにしたからな」
と言ってくれた
僕は笑顔で一週間分の引き継ぎをしてくれる先輩の肩越しに佐藤さんと目が合った
彼女の目が一瞬、白目まで塗りつぶされた黒い穴の様に見え鳥肌が立った
260: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 18:31:50.86 ID:sMgvtm+D0
「復帰早々申し訳ないです
昨日電話でお話をした通り、辞めさせていただきます」
仕事が終わり、帰る時に先輩を呼び止めた
「そうか、惜しいなあ
お前に本当に向いてると思うんだが
優しくて頼りになるって派遣の子みんな言ってたよ」
「…ありがとうございます」
背後に視線を感じる
パッと振り返ると佐藤さんがビクッと目を逸らした
一瞬見た口元は嘲笑っていた
昨日電話でお話をした通り、辞めさせていただきます」
仕事が終わり、帰る時に先輩を呼び止めた
「そうか、惜しいなあ
お前に本当に向いてると思うんだが
優しくて頼りになるって派遣の子みんな言ってたよ」
「…ありがとうございます」
背後に視線を感じる
パッと振り返ると佐藤さんがビクッと目を逸らした
一瞬見た口元は嘲笑っていた
261: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 18:40:11.87 ID:sMgvtm+D0
「先輩には感謝しかないです
僕も本当にやり甲斐を感じていました、でも…ここに居てはいけない気がして
ちょっと心の休養をしたら今度こそ、頑張り切ってみせます」
先輩は頷いて
「いや、頑張り切ってたよ、充分
長いことありがとう
次の仕事決まったら連絡くれよ?
今度は上司じゃなく友達として飲もう」
そこへ
「リーダー、いつも乗る電車の時間に間に合わなくなりますよ」
と石のように冷たい声が割り込み、先輩はあからさまに煩いな、という顔をして
「よし、退社の挨拶は気楽に昼飯前にさっさと済まそう
気が変わったら構わないから教えてくれ」
教えてくれた佐藤さんに一瞥もなく先輩は走って行ってしまった
僕も本当にやり甲斐を感じていました、でも…ここに居てはいけない気がして
ちょっと心の休養をしたら今度こそ、頑張り切ってみせます」
先輩は頷いて
「いや、頑張り切ってたよ、充分
長いことありがとう
次の仕事決まったら連絡くれよ?
今度は上司じゃなく友達として飲もう」
そこへ
「リーダー、いつも乗る電車の時間に間に合わなくなりますよ」
と石のように冷たい声が割り込み、先輩はあからさまに煩いな、という顔をして
「よし、退社の挨拶は気楽に昼飯前にさっさと済まそう
気が変わったら構わないから教えてくれ」
教えてくれた佐藤さんに一瞥もなく先輩は走って行ってしまった
262: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 18:48:40.72 ID:sMgvtm+D0
先輩が行ってしまうとカバンに荷物をまとめていた佐藤さんに近づく
あれほどの執念をうちに秘めているなんて、誰が気づくだろう
近づく僕に気づいて佐藤さんは忌々しげに言い放った
「あんたもいい面の皮だね
人の良いフリをして…女を一人弄んで自殺に追い込んだ男にまーだ取り入って甘えてるんだから
学校が一緒だっただけでコネで入社して…男同士で仲良しごっこ
気持ち悪いったらない
でも出ていくのは正解、あの女みたいにいずれ利用されて裏切られるんだから あの男はそういうクズだもんね」
息つくまもない毒にも、内心を知った今は怯まない
あれほどの執念をうちに秘めているなんて、誰が気づくだろう
近づく僕に気づいて佐藤さんは忌々しげに言い放った
「あんたもいい面の皮だね
人の良いフリをして…女を一人弄んで自殺に追い込んだ男にまーだ取り入って甘えてるんだから
学校が一緒だっただけでコネで入社して…男同士で仲良しごっこ
気持ち悪いったらない
でも出ていくのは正解、あの女みたいにいずれ利用されて裏切られるんだから あの男はそういうクズだもんね」
息つくまもない毒にも、内心を知った今は怯まない
263: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 18:54:00.83 ID:sMgvtm+D0
「…だって、それ嘘じゃないですか
先輩はそんな人じゃないし
篠原さんもあなたに「あの女」なんて言われる筋合いないですよ」
佐藤さんは「はあ?」と顔を歪めた
嫉妬のマスクを被った内側に恐れが見えた
「先輩がそんな人じゃないだって?
あんたさっきのあいつの態度みてまーだ言ってんの?キモッ…気持ち悪い!
あの失礼な、私が見えないみたいな態度みなかったの?」
興奮して唇が震えている
憐れな人だな…
こんな人はもう怖くない
先輩はそんな人じゃないし
篠原さんもあなたに「あの女」なんて言われる筋合いないですよ」
佐藤さんは「はあ?」と顔を歪めた
嫉妬のマスクを被った内側に恐れが見えた
「先輩がそんな人じゃないだって?
あんたさっきのあいつの態度みてまーだ言ってんの?キモッ…気持ち悪い!
あの失礼な、私が見えないみたいな態度みなかったの?」
興奮して唇が震えている
憐れな人だな…
こんな人はもう怖くない
264: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 19:02:52.70 ID:sMgvtm+D0
「少なくとも篠原さんは真っすぐ先輩を好きでしたよ
ショックで、周りが見えなくなっていたけど好き、という気持ちをちゃんとぶつけた…貴女は何をしたんです?
さっきだって、あんな割り込むような言い方で誰が貴女に感謝したりしますか」
今度こそ、佐藤さんは唖然としていた
「貴女がちゃんと好意を示さない限り先輩はあなたのことが嫌いなままです
言ってました、貴女に嫌われてると
自分を嫌う人を好きになる人はあまり居ないですよね」
唇がワナワナと震える
「僕は…ある理由から貴女が大嫌いです
貴女も僕がある理由から大嫌いですね
…その理由は貴女だけ知ってる
佐藤さん、素直になって幸せになってください」
ショックで、周りが見えなくなっていたけど好き、という気持ちをちゃんとぶつけた…貴女は何をしたんです?
さっきだって、あんな割り込むような言い方で誰が貴女に感謝したりしますか」
今度こそ、佐藤さんは唖然としていた
「貴女がちゃんと好意を示さない限り先輩はあなたのことが嫌いなままです
言ってました、貴女に嫌われてると
自分を嫌う人を好きになる人はあまり居ないですよね」
唇がワナワナと震える
「僕は…ある理由から貴女が大嫌いです
貴女も僕がある理由から大嫌いですね
…その理由は貴女だけ知ってる
佐藤さん、素直になって幸せになってください」
265: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 19:06:53.96 ID:sMgvtm+D0
泣くのかと思った
唇は歪み、目は煌めいた
だが、次の瞬間
「あんた頭が狂ったの?
私があんな奴好きなわけないでしょうが!気持ち悪い、あんた
本っ当に気持ち悪い
わかったみたいなこと言って、セクハラだから
あんたが居なくなるなら清々する
入ってきた時から怪しかった、アイツのご推薦だもの」
最後の方は聞き辛かった
僕はもうオフィスから出ようとしていたから
唇は歪み、目は煌めいた
だが、次の瞬間
「あんた頭が狂ったの?
私があんな奴好きなわけないでしょうが!気持ち悪い、あんた
本っ当に気持ち悪い
わかったみたいなこと言って、セクハラだから
あんたが居なくなるなら清々する
入ってきた時から怪しかった、アイツのご推薦だもの」
最後の方は聞き辛かった
僕はもうオフィスから出ようとしていたから
267: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 19:16:56.99 ID:sMgvtm+D0
それから、僕は昼休み前にじき退社する旨を伝え
本社から来た人に引き継ぎを終えついこの間退社に至った
無駄だと思いつつ念のためオフィスと資料室にお祓いをするように提言すると
先輩は
「おい、お前微妙に笑えない冗談言うなよ、心療内科行っとけよ?」
と明るく笑われた
それぞれ同僚が励ましてくれた際、餞別に混じって美しい字で書かれた手紙があった
さようなら
私はある理由から
あなたがこの世で一番大嫌い
この三日後
初めて彼女が夢に来た
終わります
本社から来た人に引き継ぎを終えついこの間退社に至った
無駄だと思いつつ念のためオフィスと資料室にお祓いをするように提言すると
先輩は
「おい、お前微妙に笑えない冗談言うなよ、心療内科行っとけよ?」
と明るく笑われた
それぞれ同僚が励ましてくれた際、餞別に混じって美しい字で書かれた手紙があった
さようなら
私はある理由から
あなたがこの世で一番大嫌い
この三日後
初めて彼女が夢に来た
終わります
268: ◆tsERP5rFx9iS 2022/10/19(水) 19:19:13.13 ID:sMgvtm+D0
大変長くなりましたが
読んでくださった方々皆様に感謝します
未だに怖いことがあったりしますが
僕は元気にやってます
読んでくださった方々皆様に感謝します
未だに怖いことがあったりしますが
僕は元気にやってます
187: 本当にあった怖い名無し 2022/10/18(火) 15:39:51.90 ID:QM0R9vXo0
近年希に見る面白さ
Comment (11)
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
まとめてくれてありがとう。
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
あと最後の夢は??
みつこ
が
しました
0時にやめて日曜の8時半からまた連投
まあ転職サイトみてるのも就活といえば就活なのかもしれないけど
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
やっぱこういうのじゃないと
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
みつこ
が
しました
コメントする