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29: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:32 ID:ZhPA6eUq
今からお話するのは、おそらく毎日、私の身の回りに起こっていた出来事で、それが日常だったから気にも止めていなかったのに、ふと疑問を感じて確かめたために見てしまったという私の体験話です。

うちの両親は、子供の夜更かしには厳しく、私達姉妹が子供だった頃は、夜8時以降のテレビを許してもらえず9時には就寝させられていました。
さすがに中学生になると、部活で帰宅も遅くなり宿題もたくさん課されましたので、就寝時間はだんだん遅くなっていきましたが。
その存在に気がついたのは、そんなころ。

夜11時頃になると必ず、犬の散歩をするおじさんが家の前を通りかかるのです。
見たことはありません。
鎖を引っ張るような「チャラッ・・・チャラッ・・・」という音と共に、鼻歌のような、一人芝居をしているような、低い声が聞こえてくるので、ただ単純に、家の中にいる私達は、「犬の散歩をしているおじさん」と、認識していたのです。
それは雨の日も風の日もかかすことのない、おじさんの日課のようでした。

30: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:34 ID:ZhPA6eUq
高校二年の夏だったと思います。
その日の夜は、台風の影響で、外は激しい雨と風でした。
私は窓に打ちつける雨音を聞きながら、妹とマンガを読んでいました。
ふと耳を澄ますと、雨音に混じって、「チャラ・・・チャラッ・・・」という、あの、鎖を引っ張る音がしていました。
私はマンガから顔を上げて、妹に話し掛けました。
「ねえ、まりこぉ。あのおじさん、こんな台風の日にも散歩してるよぉ。」
「え?・・・ほんとだぁ。こんな日に散歩なんて犬も迷惑だよねぇ。」
「どこのおじさんだろ?あんた見たことある?」

31: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:35 ID:ZhPA6eUq
妹も見たことがないというので、どこの変人か確かめたくなりベランダの窓に顔をくっつけて外を見ようとしましたが、激しい雨に窓が滲んで、おじさんの姿は見えませんでした。
今までも何度となく台風はきてるけど、そん時も散歩してたのかな・・・?
そんなことを考えながらカーテンを閉めると、私も妹も、もうおじさんに対する関心はすっかりなくなり、元の位置に寝転びなおして、マンガの続きを読み出しました。

32: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:36 ID:ZhPA6eUq
日常の物音を、ほんのちょっとでも気に止めると、その音に対して妙に敏感になることがあります。

次の日の夜、私は、あの、鎖を引っ張る音とおじさんの鼻歌が遠くにあるときから気がついていました。
おじさんが私の家にかなり近づいてきた様子なのでカーテンをちょっとだけ開け、昨日と同じように窓に顔をくっつけました。
家の前の道は、街灯がポツポツあるので、そんなに暗い道ではありません。
だから姿が見えないわけはないのです。
でも・・・・・。
例の鎖のような音と男の鼻歌みたいな声は聞こえるのに、どう目を凝らしても姿が見えないのです。
そんなはず・・・・!

33: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:43 ID:ZhPA6eUq
私は思わず窓を開けて身を乗り出しました。
一刻もはやく人間であることを確認して安心したかった。
そんな動転している私のすぐ下(部屋は二階でしたので)を姿の見えない「なにか」が「チャラッ・・・ジャッ・・・ジャラジャ・・・チャッ・・・」と、ゆっくり通過していく・・・。
うなるような声を出しながら・・・。
このことは、怖がりの妹には内緒にしておこうと思いました。
でも、黙っているのは落ち着かない。

それで翌日、学校にいくとすぐ、友達に話をしました。
女友達は私が満足する以上の反応で怖がってくれたのですが男友達がどうしても信じてくれません。
「嘘だと思うならうちに来てみれば?勇気があるならね。」
私のこの言葉に反応した三人の男子が、私の家に来る事になりました。
とはいえ、そんな夜に男子を家に入れるのを母が許すはずがありません。
うちの庭にはプレハブの物置小屋がありました。
ちょっと狭いけど、そこにこっそりと招き入れることにしました。
懐中電灯と声を録音するためのラジカセを持って、夜10時半に集合ということで。

35: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:48 ID:ZhPA6eUq
集まった男子達は緊張のためか、いつもよりしゃべりまくっていました。
いくら私が「しーっ!」と睨み付けても、「あーごめんごめん。・・・それでさ~」と、とどまるところ知らず。
私はこれから起こることより、母に見つかって怒られることの方を恐怖していました。
この3人を招き入れたことを後悔しはじめたそのときです。
男子の笑う声の合間合間に、かすかに、「チャラッ・・・・・・・」。
「来たっ!」という私の言葉で、その場の空気がいっぺんに固まり、みんな一斉に耳を澄ましました。
最初のうちは、「聞こえないぞ?え?」と言い交わしていたのもつかの間、「それ」が、だれの耳にも聞こえる距離までやってくるとまるでいきなりビデオの静止ボタンを押したように、三人の動きが止まりました。
「それ」がやってきたら懐中電灯を消す、ということも、ラジカセの録音ボタンを押す、ということも、というより、思考自体を喪失しているようでした。
私はそっと、録音ボタンを押しました。

37: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:50 ID:ZhPA6eUq
唾を飲み込む音すら聞こえてきそうな静寂の中、ゆっくりと、「それ」は近づいてくる。
やがて、鎖の音と共に、低い、底響きのするような声が聞こえてきました。
うたっているのです。
時代劇の結婚式のシーンで見たことのある、「た~か~さ~ご~や~~~」みたいな感じのものをうたっているのです。
身動きを少しでもしたら・・・息を少しでも吸ったら・・・正気を失ってしまいそうな恐怖でした。

39: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:52 ID:ZhPA6eUq
「ガタッ!」と、私達の後ろで、何かが床に落ちる音がしました。
その瞬間、「うぎゃあぁぁああぁっぅ!!!」3人のうち、YとMの二人が、絶叫をあげながら物置のドアを蹴破り、信じられないスピードで逃げていきました。
そのとき、私の精神も危なかったのかもしれません。
腰が抜けている私は残ったA君の手を必死に掴み、噛み付いていたのですから。
A君は失神していました。
開けっ放しのドアから、なんとなく生臭い空気が流れてきます。
ドアがあろうがなかろうが「それ」の通行にはまったく支障がないだろうことは想像がつきます。
もう、すぐそばまでやって来ているのです。
「見たくないっ!」動くことのできない私は、ほんの少しでも抵抗をしようとドアから顔をそらし、A君の手に噛み付きながら放り出された懐中電灯の明かりの輪をみつめて、必死に耐えていました。

40: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:54 ID:ZhPA6eUq
「ジャラッ・・・チャッ・・・ジャラッ・・・」
「それ」は、私がへたりこんでいる目の前を通過していきました。
懐中電灯の明かりの輪の中。
床から1メートルほど上空を素足で歩いている足がありました。
空気に色をつけるとこんな感じ?と思えるほどその素足は、あやふやな半透明の色をしていました。
そして、その両足には「あしかせ」がはめられていました。
どのくらいそこにへたりこんでいたのか記憶がありません。

気がつくと、両親が私の顔をのぞきこんで、名前を呼びながら、肩をゆすっていました。
YとMの叫び声を聞いて、飛んできたのだそうです。
母は私の肩を抱き、居間に座らせコーヒーをいれてくれました。
父はA君を抱きかかえ、お風呂場に連れて行きました。
(失禁してたらしい。)
A君を家に送り届けてから、すこし落ち着きを取り戻した私に、両親が打ち明け話をしてくれました。
「あれを見ないようにと思って、あんたたちを早く寝かせてたんだよ」と。
「犬の散歩のおじさん」と、勝手に思い込んでいたのもどうやら両親の「すりこみ」のなせる技だったらしい・・・・。

41: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 06:56 ID:ZhPA6eUq
なぜ、「あしかせ」をかけられたまま毎日欠かさず歩き回っているのかは、知る由もありませんが、なんにしても、私達家族が引っ越すまで続いていた現象なのでもしかしたら今でも、あそこでは鎖の音が聞こえているのかもしれません。

ところで、あの声を録音したテープ。
高校の古文の先生に聞いてもらったのです。
「た~か~さ~ご~や~~~」みたいなやつに詳しいと人づてに聞いたので。
先生によると、これは「うたい」というもので、能を舞う時に、または舞いながら、うたうものなんだそうです。
そして、この声の主はおじさんではなく、女なんだそうです。
うたっていたものは、現在も伝わっているそうで、先生は題名まで教えてくれました。
忘れちゃったけど・・・
平家のことを題材にしたものだと言っていました。

最初ははっきりと録音されていたのに数日で音が不鮮明になり、やがて消えてしまいました。
その後、引越し、進学し就職し・・・
めまぐるしい身の回りの雑事のなか、テープのことはすっかり忘れてしまい、どこへまぎれてしまったか・・・。
高校の先生に預けっぱなしのような気もするし、捨てたような気もする。
なぜだか記憶にないんです。

おしまい。

78: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 14:10 ID:30I02T60
私は高校生の時、友達とキャンプをしに行きました。
友達のうちの一人が、穴場を知っていると言うのです。
さてそこに付いてみると、川の水は美しく、魚が沢山泳ぎ、風通しがよい、申し分のない場所でした。
初めてのキャンプで、こんな良い場所に来れるとは!という事で、すっかり浮かれ気味になった私達は、まるで小学生のようにそこらへんを探検することにしました。

79: 78 04/06/20 14:10 ID:30I02T60
しばらく歩いていると、なにやら香しい香りがします。
見ると目の前に、鮮やかなピンク色の花畑が一面に広がっていました。
その美しさ、一種の神々しさに見とれて、しばしの間ぼうっとしていました。
「ねえ、これ摘んでもいいかなあ?」
「3、4本くらいなら…いいんじゃない」
今思うと、見たこともない花を摘むと言うのは、いけない行為なのですが、私達はそれを知っていながら、それを摘んでしまおうという気持ちに負けてしまいました。
美しい花に出会い、それを摘んできたと言う満足感に満たされ、その後のキャンプはとても楽しいものでした。
夕食後はランプに火をともし、雑談会。
最近のテレビの話、いやな先生の話、男の子の話、そしてつきものの怪談…。
私達は夜遅くまで、わいわいとしていました。

80: 78 04/06/20 14:11 ID:30I02T60
ところがです。
いつもにぎやかでお笑い担当のMが、いつになく静かなのです。
「M、どうしたの、大丈夫?具合悪いなら、寝なよ」
「うん、大丈夫」
そうは言っているものの、顔は真っ青、身体を縮こまらせ、ガタガタと震えています。
全然大丈夫そうではありません。
「だめだよ、今から家に帰る?」
「いいの、いいから」
皆心配して、Mによってきました。
しかしなおもMは大丈夫と言い続けます。

81: 78 04/06/20 14:12 ID:30I02T60
「うるさあああい、痛いんだよおおお!」
いよいよMが苦しそうだと言うとき、Mはいきなり私達につかみかかってきました。
そのときのMの顔は、人のそれではありませんでした。
そんな中、私の耳もとで誰かが何かを呟いています。
こんなときに悪ふざけを!
「ちょっと!」
振返ると、そこにあるのは闇ばかり。
Mは白眼を向いて倒れてしまいました。
見るとずれた服から見えるMの腹には、青いアザがくっきりとありました。
目を覚ましたMに事情を聞いてみると、「急に腹が痛くなり、下したかなあ、と思っていたが、どうもそれとは違う。そのうち、腹がさける様にいたくなり、しまいにはそこからちぎられる様な痛みが襲った。その後は分からない」
と言いました。
ただの病気ならいいでしょう、しかし、あの私達を襲ったMの顔…。
「何か」が憑いたのではないか、ということが、言わずとしても私達の中で一致していました。

82: 78 04/06/20 14:13 ID:30I02T60
「きゃあ!」
突然、メンバーの一人が悲鳴を上げて耳の後ろを押さえました。
「どうしたの?」
彼女は青い顔をして言いました。
「耳の後ろがむず痒いと思ったら、なにかが喋ってたの」
「…もう、寝ようか」
誰がともなく言ったので、皆それに従いました。
テントの中で私は、気を紛らわそうと持ってきたウォークマンで音楽を聞き始めました。

85: 78 04/06/20 14:14 ID:30I02T60
やっと落ち着いてきたときでした。
音とびがし、それに合わせて何かが聞こえます。
さっきの、私の耳もとで呟いていた、「何か」の声です。
恐ろしさのあまりがたがたと身が震えます。
「…………イ」
いやだ、いやだ、と意味もなく呟いてみても、同じでした。
声が、段々、ハッキリと聞こえる様になってきます。
「…イ……イ」
耳からヘッドフォンを思いっきり抜き、寝袋にくるまりました。
それでも、まだ聞こえてきます。
「イ…イジャ…イ」
涙が溢れ、耳を押さえても聞こえてきます。
そして、とうとう「それ」が何を言っているのかが、分かりました。
はっきりと、聞こえたのです。
「痛いじゃない」

86: 78 04/06/20 14:16 ID:30I02T60
「きゃあああああ!!」
もう我慢の限界です。
私は耳を押さえて叫びました。
「どうしたの!?」
同じテントにいる子が、私に聞きました。
それに答えようとしたとき、急に腹が痛くなりました。
それもただの痛さではありません、そこからちぎれてしまいそうな痛みです。
(痛い、痛い、死んでしまう!)
気絶しそうになるその瞬間、あの花の匂いが一瞬、漂いました。

目を覚ますと朝でした。
友達が、心配そうに私の顔をのぞいています。
聞くと、私以外にも、「誰かが耳もとで呟いていた」と言った子、そしてもうひとり、同じ様になった人がいたそうです。
一体、あれは何だったのだろうか?
そう思いながら着替えていると、足下に、茶色いかさかさしたものが触れました。
拾ってみると、それは昨日摘んだあの花でした。
一晩でこんなになってしまうなんて…?
そのとき、私の腹に、青いアザが一本あるとこに気がつきました。
そしてあることに気がつきました。

この症状が出たのは、この花を摘んだ人だけ、Mもそのひとり。
もしかして私は、摘んではいけないものをつみ、そのバチがあたったのではないのか…?

87: 78 04/06/20 14:17 ID:30I02T60
帰る前に、私は一人で、あの花畑へと行きました。
相変わらず香しい匂いがします。
ですが、そこに感じられたのは、あのときの神々しさではなく、一種の恨み…そのようなものでした。
今でも、そのアザは消えません。
多分、一生消えることはないでしょう。

89: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/06/20 14:21 ID:s6TJkqPi
>>78
結構怖かった・・・(((( ;゚Д゚))))
何か事件があった場所だったとか?
花畑の下には死体が・・・みたいな。

91: 78 04/06/20 14:25 ID:30I02T60
>>89
それは分かりません。
その穴場を教えてくれた友達も、分からないと言っていました。
ただ、私が思うに、その花自体が神様みたいなもので、
罰として花がちぎられたときの痛みを、私にも与えたのではないのか、
と思っています。


引用元: https://hobby5.5ch.net/test/read.cgi/occult/1087654494/