25: 毒男 ◆B.DOLL/gBI 2020/10/18(日) 23:14:49.426 ID:K7fATA5o0
今から十年前の冬、当時付き合っていた彼女との二人旅の話。
そのホテルは山に囲まれた湖の湖畔に立っていた。
チェックインの後、部屋で窓の外を眺めながらくつろいでいると、湖に浮かぶ一艘のボートに目が留まった。
ボートには白のTシャツに若草色のパンツ姿の女性がいた。
女性は何やら慌てふためいていた。やがて手でメガホンの形を作り、手前の岸に向かって何か声を上げた。
距離があるためか、声は全く聞こえてこなかった。
「何か見える?」
背後から彼女が声をかけてきた。
「あのボート、もしかして……」
「やだ、沈んでいるじゃない!」
フロントに湖で女性が溺れているから救助してやってくれと電話した。
「はぁ」
と気のない返事。俺は部屋を飛び出して表に出た。
湖の水面は穏やかで、波ひとつ立っていない。
ほとりにいた人たちに女性はどうなったのか訊ねてみたが、皆、ボートに乗った女性どころか、ボートが湖に出ているところすら見ていないという。
「本当に見ませんでしたか?ほら、白の……」
俺はそこで硬直してしまった。
気が付くと、周りの全員が俺のことを訝しんでいる。
立つ瀬が無くなり視線を彷徨っていると、白い板張りのボートハウスが目に留まった。
管理人が何か見ているんじゃないかと思い、俺はそこへ向かった。
ホテルの部屋に戻ると、彼女がガタガタと震えていた。俺は彼女の肩を抱いて何かあったのか訊ねた。
「あの人、しばらくこっちの岸に向かって何か声を上げているんだけど誰も気付かなくて、そしたら窓から覗いているわたしに気付いたみたいで、わたしに向かって『助けて、助けて』と叫びながら沈んでいった。すごく恨めしそうな顔をして……
「ねぇ、おかしいよね?。岸に向かって叫んでいた時は何も聞こえなかったのに、どうしてわたしの方を向いた瞬間、あの人の悲鳴が聞こえるの?。ベランダに出ていたのならともかく、窓から覗いているわたしに気付けるものなの?。だいたいそもそも……」
「冬にTシャツ一枚はおかしいよな?」
「うぅ、うん」
「湖のほとりにいた人に訊ねてみたけど、ボートなんて知らないって。ボートハウスがあったから管理人に聞こうと思ったんだけど、『冬期休業中』って看板があった。
ボートは全部、陸に上げられていてブルーシートを被せられていたよ。少なくとも勝手に持ち出せるような状態にない。よくよく考えてみれば、こんな寒いなか、ボート遊びをする人なんているわけがない」
「じゃぁ、じゃぁ、わたしたちがここから見たものは何なのっ?!」
しばらく沈黙した後、俺の方から帰ろうかと誘った。
フロント係に適当な理由を挙げて宿泊のキャンセルを申し出た。宿泊料の90%払うというホテル側の条件を飲んで、俺たち二人は家に帰った。
そのホテルは山に囲まれた湖の湖畔に立っていた。
チェックインの後、部屋で窓の外を眺めながらくつろいでいると、湖に浮かぶ一艘のボートに目が留まった。
ボートには白のTシャツに若草色のパンツ姿の女性がいた。
女性は何やら慌てふためいていた。やがて手でメガホンの形を作り、手前の岸に向かって何か声を上げた。
距離があるためか、声は全く聞こえてこなかった。
「何か見える?」
背後から彼女が声をかけてきた。
「あのボート、もしかして……」
「やだ、沈んでいるじゃない!」
フロントに湖で女性が溺れているから救助してやってくれと電話した。
「はぁ」
と気のない返事。俺は部屋を飛び出して表に出た。
湖の水面は穏やかで、波ひとつ立っていない。
ほとりにいた人たちに女性はどうなったのか訊ねてみたが、皆、ボートに乗った女性どころか、ボートが湖に出ているところすら見ていないという。
「本当に見ませんでしたか?ほら、白の……」
俺はそこで硬直してしまった。
気が付くと、周りの全員が俺のことを訝しんでいる。
立つ瀬が無くなり視線を彷徨っていると、白い板張りのボートハウスが目に留まった。
管理人が何か見ているんじゃないかと思い、俺はそこへ向かった。
ホテルの部屋に戻ると、彼女がガタガタと震えていた。俺は彼女の肩を抱いて何かあったのか訊ねた。
「あの人、しばらくこっちの岸に向かって何か声を上げているんだけど誰も気付かなくて、そしたら窓から覗いているわたしに気付いたみたいで、わたしに向かって『助けて、助けて』と叫びながら沈んでいった。すごく恨めしそうな顔をして……
「ねぇ、おかしいよね?。岸に向かって叫んでいた時は何も聞こえなかったのに、どうしてわたしの方を向いた瞬間、あの人の悲鳴が聞こえるの?。ベランダに出ていたのならともかく、窓から覗いているわたしに気付けるものなの?。だいたいそもそも……」
「冬にTシャツ一枚はおかしいよな?」
「うぅ、うん」
「湖のほとりにいた人に訊ねてみたけど、ボートなんて知らないって。ボートハウスがあったから管理人に聞こうと思ったんだけど、『冬期休業中』って看板があった。
ボートは全部、陸に上げられていてブルーシートを被せられていたよ。少なくとも勝手に持ち出せるような状態にない。よくよく考えてみれば、こんな寒いなか、ボート遊びをする人なんているわけがない」
「じゃぁ、じゃぁ、わたしたちがここから見たものは何なのっ?!」
しばらく沈黙した後、俺の方から帰ろうかと誘った。
フロント係に適当な理由を挙げて宿泊のキャンセルを申し出た。宿泊料の90%払うというホテル側の条件を飲んで、俺たち二人は家に帰った。
26: 毒男 ◆B.DOLL/gBI 2020/10/18(日) 23:15:12.176 ID:K7fATA5o0
今年の夏、彼女から暑中見舞いをもらった。
彼女とはその後二年ほど付き合ったが、俺の不徳により別れてしまった。
今は結婚して一児の母になっている。
暑中見舞いには次のことが書かれていた。
『○○さんはあのホテルのことを覚えていますか?。実は先日、主人からあのホテルに関する噂話を聞いたのです。
主人が言うに、あのホテルには女性の幽霊が出るという噂があるのです。
夜な夜な、全身ずぶ濡れの女性が枕元に現れ、すごく恨めしそうな顔で
「あんなに助けてと叫んだのに……」
と言って、泊り客をあの世へ引きずり込もうとするそうです。
本当の話かどうかは判りませんが、「助けてと叫んだのに」というところが、わたしたちの見たボートの女性と妙に符合するので気になります』
以上です。
元カノから「○○さん」と名前を他人行儀で言われると、ちょっとヘコみますね
彼女とはその後二年ほど付き合ったが、俺の不徳により別れてしまった。
今は結婚して一児の母になっている。
暑中見舞いには次のことが書かれていた。
『○○さんはあのホテルのことを覚えていますか?。実は先日、主人からあのホテルに関する噂話を聞いたのです。
主人が言うに、あのホテルには女性の幽霊が出るという噂があるのです。
夜な夜な、全身ずぶ濡れの女性が枕元に現れ、すごく恨めしそうな顔で
「あんなに助けてと叫んだのに……」
と言って、泊り客をあの世へ引きずり込もうとするそうです。
本当の話かどうかは判りませんが、「助けてと叫んだのに」というところが、わたしたちの見たボートの女性と妙に符合するので気になります』
以上です。
元カノから「○○さん」と名前を他人行儀で言われると、ちょっとヘコみますね
29: 毒男 ◆B.DOLL/gBI 2020/10/18(日) 23:26:05.758 ID:K7fATA5o0
俺の爺さんには従兄がいたらしいんだが、10代前半で亡くなっている。
それがどうも不自然な死に方だったというので、死んだ当時は親戚や近所の連中にいろいろ騒がれたんだそうだ。
戦後すぐの物がない時代のある日、その従兄は友達と何か売ったり食べ物と交換したりできるものはないかと、実家の蔵の中をあさっていた。
その従兄はうちの本家の人間だったので、蔵にはガラクタとも骨董品ともつかないものがごちゃごちゃとあったらしく、その中から何か見つけてやろうと思ったらしい。
探しているうちに、ひょっとこのお面を見つけたそうだ。
そのお面が気に入ったのか、従兄はそれをかぶってとおりに飛び出しでたらめに踊りだした。
もちろん一緒にいた友達連中にもバカ受けで、ひとしきり大騒ぎして、そのまま夕方までひょっとこの面をかぶって遊んでいたらしいんだが、そのうちに従兄が何かにつまづいたか、突然転んで道に倒れて動かなくなった。
最初はふざけてるのかと思ったが、呼んでもゆすっても返事がないので様子がおかしいと思い、すぐに抱え上げて、本家の座敷に連れて帰った。
倒れたままの状態で身体はほとんど動かないが、かすかな声で
「面を…面を取ってくれ…」
とうめくのが聞こえる。
あわててひょっとこの面を取ると、顔色は土色、唇は紫、すっかり生気がなくなっていて、まさに死人の顔だったという。
もうほとんど呼吸もはっきりしない状態の従兄をみて、家族も半ば覚悟して医者を呼んだ。
従兄が倒れてから医者が来るまで実に30分と経っていないはずだった。
しかし、駆けつけた医者は従兄をすこし見てすぐに、厳しい調子で家族に言った。
「どうして放っておいたんですか!?亡くなってから半日は経ってます」
それがどうも不自然な死に方だったというので、死んだ当時は親戚や近所の連中にいろいろ騒がれたんだそうだ。
戦後すぐの物がない時代のある日、その従兄は友達と何か売ったり食べ物と交換したりできるものはないかと、実家の蔵の中をあさっていた。
その従兄はうちの本家の人間だったので、蔵にはガラクタとも骨董品ともつかないものがごちゃごちゃとあったらしく、その中から何か見つけてやろうと思ったらしい。
探しているうちに、ひょっとこのお面を見つけたそうだ。
そのお面が気に入ったのか、従兄はそれをかぶってとおりに飛び出しでたらめに踊りだした。
もちろん一緒にいた友達連中にもバカ受けで、ひとしきり大騒ぎして、そのまま夕方までひょっとこの面をかぶって遊んでいたらしいんだが、そのうちに従兄が何かにつまづいたか、突然転んで道に倒れて動かなくなった。
最初はふざけてるのかと思ったが、呼んでもゆすっても返事がないので様子がおかしいと思い、すぐに抱え上げて、本家の座敷に連れて帰った。
倒れたままの状態で身体はほとんど動かないが、かすかな声で
「面を…面を取ってくれ…」
とうめくのが聞こえる。
あわててひょっとこの面を取ると、顔色は土色、唇は紫、すっかり生気がなくなっていて、まさに死人の顔だったという。
もうほとんど呼吸もはっきりしない状態の従兄をみて、家族も半ば覚悟して医者を呼んだ。
従兄が倒れてから医者が来るまで実に30分と経っていないはずだった。
しかし、駆けつけた医者は従兄をすこし見てすぐに、厳しい調子で家族に言った。
「どうして放っておいたんですか!?亡くなってから半日は経ってます」
30: 毒男 ◆B.DOLL/gBI 2020/10/18(日) 23:36:15.058 ID:K7fATA5o0
私の家の近所、数軒先に先日まで空き家だった家があります。
もう築30年程たつ古い家です。
昨年、前の持ち主が他界されたので売りに出されておりました。
その家にまつわる話です。
前の前の持ち主、Kさんはごくごく一般的な家庭。
両親と中学生の娘の3人暮らしでした。
娘さんは少々神経過敏なところがあり、中学にあがってから親と衝突が絶えなかったようです。
そして15歳になった夏、いつものように親子ゲンカした娘は風呂場で手首を切って狂言自殺を図ろうとしました。
風呂に入り手首を切り…そして貧血のため意識を失ったようです。
30年前ですから、今のようなお湯を入れて終わり、という風呂ではありません。ガス風呂です。
娘は真っ赤に染まった風呂の中で湯だった状態で発見され、体中ふやけていたそうです。
Kさんはその事件の後、すぐに引っ越されました。
Kさんが引越した後、今度はIさん一家が引越ししてきました。
Iさん一家は両親、大学在学中の兄、中学生の娘の4人一家。
兄は市外の大学だったため、夏休み以外はほとんど家に帰ることはなかったようです。
中学生の娘は大人しく、親に従順な子だったそうです。
その娘が15歳の夏、体育の授業で跳び箱に失敗し頭から落ち、脳内出血で亡くなりました。
原因は友人が壊れていた跳び箱をよくおさえていなかったからだと、母親は娘の友人を恨んでいたようです。
このころ私の母親も、I家を訪れる娘の友人の姿をよく見たそうです。
そして半年後、今度は母親が骨肉種を患い、最後は眼球、鼻、唇など全て侵されたため手術で切り取りまるでのっぺらぼうのようになって亡くなったそうです。
そしてその母親の死後から一年もたたないうちにI家のご主人は友人の紹介で後家さんをもらうことになりました。
後家さんをもらったI家ですが、後家さんは中々明るい方で近所づきあいも上手。
息子ともうまくやっているようで、この家の住人も今度こそ落ち着くだろうと近所の人々は安心しておりました。
しかし、結婚して一年後。
後家さんは風呂場でガス中毒(鳥が巣を作っていたため)で倒れ、K家の娘のように湯船の中で湯だった状態で発見されたのです。
当時私は幼かったのですが、救急車とその家との雰囲気をはっきりと覚えています。
禍々しい…異様な。
もう築30年程たつ古い家です。
昨年、前の持ち主が他界されたので売りに出されておりました。
その家にまつわる話です。
前の前の持ち主、Kさんはごくごく一般的な家庭。
両親と中学生の娘の3人暮らしでした。
娘さんは少々神経過敏なところがあり、中学にあがってから親と衝突が絶えなかったようです。
そして15歳になった夏、いつものように親子ゲンカした娘は風呂場で手首を切って狂言自殺を図ろうとしました。
風呂に入り手首を切り…そして貧血のため意識を失ったようです。
30年前ですから、今のようなお湯を入れて終わり、という風呂ではありません。ガス風呂です。
娘は真っ赤に染まった風呂の中で湯だった状態で発見され、体中ふやけていたそうです。
Kさんはその事件の後、すぐに引っ越されました。
Kさんが引越した後、今度はIさん一家が引越ししてきました。
Iさん一家は両親、大学在学中の兄、中学生の娘の4人一家。
兄は市外の大学だったため、夏休み以外はほとんど家に帰ることはなかったようです。
中学生の娘は大人しく、親に従順な子だったそうです。
その娘が15歳の夏、体育の授業で跳び箱に失敗し頭から落ち、脳内出血で亡くなりました。
原因は友人が壊れていた跳び箱をよくおさえていなかったからだと、母親は娘の友人を恨んでいたようです。
このころ私の母親も、I家を訪れる娘の友人の姿をよく見たそうです。
そして半年後、今度は母親が骨肉種を患い、最後は眼球、鼻、唇など全て侵されたため手術で切り取りまるでのっぺらぼうのようになって亡くなったそうです。
そしてその母親の死後から一年もたたないうちにI家のご主人は友人の紹介で後家さんをもらうことになりました。
後家さんをもらったI家ですが、後家さんは中々明るい方で近所づきあいも上手。
息子ともうまくやっているようで、この家の住人も今度こそ落ち着くだろうと近所の人々は安心しておりました。
しかし、結婚して一年後。
後家さんは風呂場でガス中毒(鳥が巣を作っていたため)で倒れ、K家の娘のように湯船の中で湯だった状態で発見されたのです。
当時私は幼かったのですが、救急車とその家との雰囲気をはっきりと覚えています。
禍々しい…異様な。
31: 毒男 ◆B.DOLL/gBI 2020/10/18(日) 23:36:35.769 ID:K7fATA5o0
近所では噂が立ちました。
あの家に住む女性はみんな死ぬ。
亡くなった後家さんに至っては、K家の娘と同じ状態で発見されたため、娘の呪いかもしれないと囁かれました。
いつしか噂は町内の外にもオレ、近隣住民では誰も知らぬ者は無いほどの有名な家となりました。
I家のご主人はそれからもこの不名誉な噂がたった家にずっと住み続けました。
20余年の歳月が流れ、住民の様子も変わり古くから住んでいるものも、噂を口にすることがなくなっていました。
そして昨年、I氏は亡くなりました。
息子さんが家を売りに出したのは今年になってからでした。
古いということと、家の雰囲気がどことなく暗いことから買い手がなかなかつかない様子でしたが、今年の夏町内の貸家に入っていた一家の引越しが決まりました。
一家は4人。家中の明かりを点して、今まで暗かった空き家にすっかり活気が戻ったように見えます。
しかし…。
古くから住んでいる町内の者は皆息を潜めて事の成り行きを見守っているのです。
なぜなら、一家の娘は現在14歳。来年は15歳。
あの家に住んだ娘は16歳になれないからです。
あの家に住む女性はみんな死ぬ。
亡くなった後家さんに至っては、K家の娘と同じ状態で発見されたため、娘の呪いかもしれないと囁かれました。
いつしか噂は町内の外にもオレ、近隣住民では誰も知らぬ者は無いほどの有名な家となりました。
I家のご主人はそれからもこの不名誉な噂がたった家にずっと住み続けました。
20余年の歳月が流れ、住民の様子も変わり古くから住んでいるものも、噂を口にすることがなくなっていました。
そして昨年、I氏は亡くなりました。
息子さんが家を売りに出したのは今年になってからでした。
古いということと、家の雰囲気がどことなく暗いことから買い手がなかなかつかない様子でしたが、今年の夏町内の貸家に入っていた一家の引越しが決まりました。
一家は4人。家中の明かりを点して、今まで暗かった空き家にすっかり活気が戻ったように見えます。
しかし…。
古くから住んでいる町内の者は皆息を潜めて事の成り行きを見守っているのです。
なぜなら、一家の娘は現在14歳。来年は15歳。
あの家に住んだ娘は16歳になれないからです。
引用元: ・https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1603024259/
Comment (6)
みつこ
がしました
みつこ
がしました
今時の古老「ネットで自分で調べんかい!?」
ばあさん・・・。
みつこ
がしました
みつこ
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みつこ
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