452: 師事 03/04/29 21:31
僕がド田舎から某中規模都市の大学に入学した時。とりあえず入ったサークルにとんでもない人がいた。
大学受験期にストレスからかやたら金縛りにあってて色々怖い目にあったことから、オカルトへの興味が高まっていた時期で、そんな話をしているとある先輩が「キミィ。いいよ」と乗ってきてくれた。その先輩は院生で仏教美術を専攻している人だった。

すっかり意気投合してしまい、見学にいったその日の夜ドライブに連れて行ってもらった。
夜食を食べに行こうと言って、えらい遠くのファミレスまで連れていかれた。そこは郊外のガストで、「なんでここなんですか?」って表情をしてたら先輩曰く「ここな、出るよ。俺のお気に入り」アワアワ…

453: 師事 続き 03/04/29 21:31
ファミレス自体始めての田舎者の僕は、それでさえ緊張してるのに出るってアンタ。「俺が合図したら俯けよ。足だけなら見えるはず」そんなことを言われて飯が美味いはずがない。
もさもさ食ってると、急に耳鳴りが・・・・・

冷や汗が出始めて、手が止ると先輩が「オイ。俯けよ」慌ててテーブルに目を落した。
しばらくじっとしてると、ていうか動けないでいると視線の右端、テーブルのすぐ脇を白い足がすーっと通りすぎた。いきなり肩を叩かれて我に返った。

「見たか?」リングの公開前だったが、のちに見ると高山が街で女の足を見るシーンがこれにそっくりだった。

454: 師事 ラスト 03/04/29 21:32
僕が頷くと「今のが店員の足が一人分多いっていうこのガストの怪談の出所。
俺はまるまる見えるんだけどな。顔は見ない方が幸せだ」なんなんだ、この人。「早く食べろ。俺嫌われてるから」俺もわりに幽霊は見る方なんだが、こいつはとんでもない人だとこの時自覚した。

そのあと空港へ向う山道の謎の霧だとか、先輩お気に入りの山寺巡りなどに連れまわされて、朝方ようやく解放された。以来俺はその先輩を師匠と仰ぐことになった。それは師匠の謎の失踪まで続く。

469: 03/04/29 22:29
僕のオカルト道の師匠は当時家賃9000円の酷いアパートに住んでいた。
鍵もドラム式で掛けたり掛けなかったりだったらしい。

ある朝目が覚めると見知らぬ男の人が枕元に座ってて「おはようございます」というので「おはようございます」と挨拶すると宗教の勧誘らしきことをはじめたから「さようなら」といってその人おいたまま家を出てきたという逸話がある。
防犯意識皆無の人で、僕がはじめて家に呼んでもらった時も当然鍵なんか掛けていなかった。

470: 03/04/29 22:29
酒を飲んで2人とも泥酔して、気絶するみたいにいつのまにか眠っていた。僕が夜中に耳鳴りのようなものを感じて目を覚ますと、横に寝ていた師匠の顔を除き込むようにしている男の影が目に入った。
僕は泥棒だと思い、一瞬パニックになったが体が硬直して声をあげることもできなかった。

僕はとりあえず寝てる振ふりをしながら、薄目をあけてそっちを凝視していると男はふらふらした足取りで体を起こすと玄関のドアのほうへ行きはじめた。

『いっちまえ。何も盗るもんないだろこの部屋』と必死で念じていると男はドアを開けた。薄明かりの中で一瞬振り返ってこっちを見た時、右頬に引き攣り傷のようなものが見えた。男が行ってしまうと僕は師匠をたたき起こした。「頼むから鍵しましょうよ!」もうほとんど半泣き。

471: 鍵 ラスト 03/04/29 22:30
しかし師匠とぼけて曰く「あー怖かったー。でも今のは鍵しても無駄」
「なにいってるんすか。アフォですか。ていうか起きてたんすか」僕がまくしたてると師匠はニヤニヤ笑いながら「最後顔見ただろ」頷くと、師匠は自分の目を指差してぞっとすることを言った。

「メガネ」それで僕はすべてを理解した。僕は視力が悪い。眼鏡が無いとほとんど何も見えない。
今も間近にある師匠の顔でさえ、輪郭がぼやけている。

「眼鏡ナシで見たのは初めてだろ?」僕は頷くしかなかった。そういうものだとはじめて知った。結局あれは行きずりらしい。何度か師匠の部屋に泊まったが2度と会うことはなかった。

631: コジョウイケトンネル 03/04/30 20:52
師匠には見えて、僕には見えないことがしばしばあった。
夏前ごろ、オカルト道の師匠に連れられてコジョウイケトンネルに深夜ドライブを敢行した。

コジョウイケトンネルは隣のK市にある有名スポットで、近辺で5指に入る名所だ。
K市にはなぜか異様に心霊スポットが多い。道々師匠が見所を説明してくれた。

「コジョウイケトンネルはマジで出るぞ。手前の電話ボックスもヤバイがトンネル内では入りこんでくるからな」入りこんでくるという噂は聞いたことがあった。

「特に3人乗りが危ない。一つだけ座席をあけていると、そこに乗ってくる」僕は猛烈に嫌な予感がした。師匠の運転席の隣にはぬいぐるみが座っていた。僕は後部座席で一人観念した。「乗せる気ですね」トンネルが見えてきた。

632: コジョウイケトンネル 続き 03/04/30 20:52
手前の電話ボックスとやらにはなにも見えなかったが、トンネル内に入るとさすがに空気が違う。
思ったより暗くて僕はキョロキョロ周囲を見まわした。

少し進んだだけで、これは出る、と確信する。耳鳴りがするのだ。僕は右側に座ろうか左側に座ろうか迷って、真ん中あたりでもぞもぞしていた。右側の対抗車線からくるか、左の壁側からくるのか。

ドキドキしていると、いきなり師匠が叫んだ。「ぶっ殺すぞコラァッァ!!!」僕が言われたのかと縮みあがった。「頭下げろ、触られるな」耳鳴りがすごい。
しかし何も見えない。慌てて頭を下げるが、見えない手がすり抜けたかと思うと心臓に悪い。「逃げるなァ!!逃げたらもう一回殺す!」

633: コジョウイケトンネル ラスト 03/04/30 20:53
師匠が啖呵を切るのはなんどか見たが、これほど壮絶なのは初めてだった。
「おい、逃がすな、はやく写真とれ」心霊写真用に僕がカメラを預かっていたのだ。
しかし・・・「どっちっスか」「はやく、右の窓際」「見えませんッ」「タクシーの帽子!見えるだろ。逃げるなコラァ!殺すぞ」「見えません!」ちっ、と師匠は舌打ちして前を向き直った。

ブレーキ掛ける気だ・・・俺は真っ青になって、めったやたらにシャッターを切った。
トンネルを出た時には生きた心地がしなかった。後日現像された写真を見せてもらうとそこには窓と、そのむこうのトンネル内壁のランプが写っていた。師匠は不機嫌そうに言った。

「俺から見て右の窓だった」よく見ると窓にうつるカメラを構えた僕の肩の後ろに、うっすらとタクシー帽を被った初老の男の怯えた顔が写っていた。

481: そうめんの話 03/04/29 23:31
これは怪談じゃないが話しておかなくてならない。
僕のオカルト道の師匠が、急にサークルに顔を出さなくなった。
師匠の同期の先輩がいうには大学にも来てないとのこと。

心配になって僕は師匠の家に直接いってみた。
すると案の定鍵が開いていたのでノックして乗り込むとゲッソリした師匠が布団に寝ている。
話を聞いてみると「食欲が無くてもう1週間そうめんしか食べてない」そりゃやつれるわ。と思い僕が「何か食うもんないんですか?死にますよ」といって部屋をあさったが何も出てこない。

482: そうめんの話 03/04/29 23:32
「夏バテですか?」と聞いたが答えない。
何も答えてくれないのでもう知らんわい、と僕は薄情にも家を出た。僕は師匠を恐れてはいたが、妙に彼は子供っぽいところがあり、ある面僕はナメていた。その頃にはため口もきいたし。二日後にまた行くと、同じ格好で寝ている。

部屋から一歩も出ずに1日中ゴロゴロしているそうだ。「そうめんばっかりじゃもちませんよ」と僕がいうと師匠は急にうっぷと胸を押えてトイレにかけこんだ。
背中をさすると、ゲロゲロと吐き始めた。

それを見ながら僕は「白いそうめんしか食ってなくても、ゲロはしっかり茶色いんだなぁ」と変なことを考えていたがふと気付いた。そういえば・・・

483: そうめんの話 ラスト 03/04/29 23:32
もう一度あさったがやはり何もない。
そうめんさえこの部屋にはないのだ。
「なに食ってるんスか先輩」と詰め寄ったが答えてくれない。なにかに憑かれてんじゃねーのかこの人?と思ったが、僕にはどうしようもない。取りあえずむりやり病院に連れて行くと、栄養失調で即入院になった。

点滴打ってると治ったらしく4日後には退院してきたがあの引きこもり中に何を食べていたのか、結局教えてくれなかった。
ただなぜかそれから口調が急に変わった。

「俺。オイコラ」から、大人しい「僕。~だね。~だよ」になり、子供っぽさが加速した。その一回生の夏、僕は師匠とオカルトスポットに行きまくったのだが、おかげで頼りがいがなく色々ヤバイ目にあう。

504: 失踪 1/5 03/04/30 01:35
寝れないので、再度登場。
師匠との話をまだいくつか書くつもりだが、俺が途中で飽きるかもしれんし、叩かれてへこんで止めるかもしれないので先に一連の出来事の落ちである、師匠の失踪について書いておく。

俺が3回生(単位27。プw)の時、師匠はその大学の図書館司書の職についていた。そのころ師匠はかなり精神的に参ってて、よく「そこに女がいる!」とか言っては何も無い空間にビクビクしていた。
俺は何も感じないが、俺は師匠より霊感がないので師匠には見えるんだと思って一緒にビビっていた。

変だと思いはじめたのは、3回生の秋頃。師匠とはめったに会わなくなっていたが、あるとき学食で一緒になって同じテーブルについたとき「後ろの席、何人見える?」と言いだした。

505: 失踪 2/5 03/04/30 01:35
夜九時前で学食はガラガラ。
後ろのテーブルにも誰も座っていなかった。
「何かみえるんすか?」というと「いるだろう?何人いる?」とガタガタ震えだした。耳鳴りもないし、出る時独特の悪寒もない。

俺はその時思った。憑かれてると思いこんでるのでは・・・・・俺は思いついて「大丈夫ですよ。なにもいませんよ」というと「そうか。そうだよね」と安心したような顔をしたのだ。

確信した。霊はここにいない。師匠の頭に住みついてるのだ。『発狂』という言葉が浮んで俺は悲しくなり、無性に泣きたかった。

506: 失踪 3/5 03/04/30 01:36
百話物語りもしたし、肝試しもしまくった。
バチ当たりなこともいっぱいしたし、降霊実験までした。
いいかげん取り憑かれてもおかしくない。
でも多分師匠の発狂の理由は違う。
食事をした3日後に師匠は失踪した。

探すなという置手紙があったので、動けなかった。師匠の家庭は複雑だったらしく、大学から連絡がいって叔母とかいう人がアパートを整理しに来た。すごい感じ悪いババアで、親友だったと言ってもすぐ追い出された。
師匠の失踪前の様子くらい聞くだろうに。結局それっきり。しかし俺なりに思うところがある。

507: 失踪 4/5 03/04/30 01:37
俺が大学に入った頃、まことしやかに流れていた噂。「あいつは人殺してる」冗談めかして先輩たちが言っていたが、あれは多分真実だ。

師匠はよく酔うと言っていたことがある。「死体をどこに埋めるか。それがすべてだ」この手のジョークは突っ込まないという暗黙のルールがあったがそんな話をするときの目がやたら怖かった。

そして今にして思い、ぞっとするのだが師匠の車でめぐった数々の心霊スポット。中でもある山(皆殺しの家という名所)に行ったときこんなことを言っていた。

「不特定多数の人間が深夜、人を忍んで行動する。そして怪奇な噂。怨恨でなければ、個人は特定できない」

508: 失踪 5/5 03/04/30 01:39
聞いた時はなにをいっているのか分らなかったが、多分師匠は心霊スポットを巡りながら埋める場所を探していたのではないだろうか。

俺がなによりぞっとするのは、俺が助手席に乗っているときあの車のトランクのなかにそれがあったなら・・・・・・

今思うとあの人についてはわからないことだらけだ。ただ「見える」人間でも心の中に巣食う闇には勝てなかった。性格が変わった、あのそうめん事件のころから師匠は徐々に狂いはじめていたのではないだろうか。
師匠の忘れられない言葉がある。俺がはじめて本格的な心霊スポットに連れて行かれ、ビビリきっているとき師匠がこういった。「こんな暗闇のどこが怖いんだ。目をつぶってみろ。それがこの世で最も深い闇だ」

663: さようなら 03/05/01 00:30
隠れコテハンのウニです。
以前ちらっと触れた由加山皆殺しの家の話をこれから貼っつけようと思っていたんですが、さっき親父が言うことには 今朝、親父の箸がテーブルの上で割れていたそうです。

こうしたことはバカにできないので、師匠との話をこれ以上書くのはやめようと思います。
僕の箸だったら屁でもないんですが、親父になにかあったら凹むので・・・

もっと聞きたいというありがたいレス、感謝でした。 筆を折るのは残念ですが、今にして思うと「失踪」を先に書いておいたは虫が知らせたのかもしれません。また名無しにもどります。ではさようなら。

     Comment (3)

      • 1. 丑三つ時の名無しさん
      • 2019年10月26日 00:28
      • ウニさんの師匠シリーズか、懐かしい。
        でもなんで今更?
        貯水池が好きだったなぁ。
      • 0
        みつこ

        みつこ

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      • 2. 名無しさん
      • 2019年10月26日 01:20
      • 倉敷の話か
      • 0
        みつこ

        みつこ

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      • 3. 丑三つ時の名無しさん
      • 2019年10月26日 08:28
      • めっちゃ地元で笑ったー
      • 0
        みつこ

        みつこ

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