677: 避難小屋 03/06/08 23:47
信州のそれほど高くない山、A氏は一人で登山中崖から落ちて脚を骨折してしまった脚を引きずりながら山道を進む。
そのうち、だんだん日が傾き夜を迎えた。
暗いなかをこれ以上歩くのはかえって迷うおそれがあり危険だ。

するとすぐ先に避難小屋がみえた。
まだ携帯電話もない時代である。
後から来る通行人を待つしかない。
とりあえずA氏はそこで一晩過ごすことにした。

日帰りのつもりで来ていたのでろくな装備はない。
避難小屋にも備蓄がない。
とりあえず用意してきた非常食をほおばり、新聞を床に敷き、防寒着を布団がわりに肘枕で寝ることにした。・・・

ふと枕元に目を落とすと汚い大学ノートがある。
よく避難小屋においてある非常時の連絡用ノートだった。
どうせやることもない山小屋の夜である。
A氏はパラパラとノートをめくり読み始めた。

「12月23日
クリスマスを自宅で迎えるはずが、途中の山道で迷ってしまい下山出来なくなった。レトルトカレーで夕食をすませると寝ることにした」

「12月24日
ホワイトクリスマスになってしまった。雪が激しくて結局戻ってきた。それにしても昨日の声は何だったのだろう?遠くの向こうの尾根のほうで5~6人が叫ぶような声が聞こえた。時計をみたら深夜2時半だった。」