525: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 05:29
私にはA子という彼女がいました。
しかし社会人になり仕事がA忙しくなると、デートの時間もなかなかとれず、お互いイライラが募り、すれ違いばかりで、喧嘩が絶えなくなりました。

ある日、彼女と大喧嘩をし、私は絶縁の言葉を投げかけ別れました。
その晩、変な夢を見たのです。
見知らぬ町を歩いていると、遠くから麦藁帽子をかぶった少年が自転車で近づいてきました。
そして「僕はA子の兄だ。妹と別れるなら責任を取れ」と言うのです。
彼女には生後3ヶ月で亡くなった兄がいたのは知っていました。
私が謝ると、お兄さんが着いて来るように言うので、従いました。

しばらく歩くと鬱蒼とした森に出ました。
突然、空から一羽の鳥が襲い掛かって来て、私の顔やら手やらを噛み千切ってきたのです。
私は血だらけになりながら、無我夢中で逃げましたがどこまでも追ってきます。
そしてよく見ると、それは鳥ではなかったのです。
怒りに顔を歪め、恐ろしい形相をしたキューピッドなのです。

526: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 05:32
歯をむき出し、羽根をばたつかせて、「キーキー!」と奇声をあげて追いかけてきます。
いつの間にかお兄さんが自転車で私に併走していて、「殺さないと食べられるぞ!」と叫びました。
キューピッドが飛びついてきて肩に噛み付いてきました。
血が噴出し、激痛が走り、本当に殺されると思い必死でキューピッドの首を絞めました。
キューピッドは血だらけの顔を苦しそうに歪め・・・・。
その時、何故か悲しくなり、手の力を緩めました。
キューピッドは急に大人しくなりました。
同時に私の意識は朦朧とし、気を失いました。
遠のく意識の中、お兄さんが「それはA子と君の子供だ。」と言ったのを聞きました。

目が覚めると、すぐにA子に電話をしました。
すると、A子は泣きながら妊娠していることを告白しました。
喧嘩ばかりで言い出せなかったのだと。
そしてなんと、黙って中絶することを考えていたのだと。
私達は話し合い、よりを戻しました。
それからは喧嘩もしなくなり私達は結婚し、A子も無事出産しました。
生まれた子供は夢の中のキューピッドとは全く似ていません。
もちろん。
ただ、もしA子と別れ、中絶させていたら、この子は、あのキューピッドのような恐ろしい表情で、この世から消えていっていたのかも知れません。

656: 掴む話 1/2 03/09/21 21:41
三年前のちょうど今頃の話。
俺は安くて狭いワンルームマンションで暮らしていた。
隣は国籍不明の外国人。
会社の寮代わりに使われているようで、住人は時々変わっていたので良く知らない奴だった。
反対側は俺より少し若いくらいの若者が引っ越してきたばかりだった。
ある休みの日に出かけようとドアを開けると、隣の若いのも扉を開けて出てきた。

偶然じゃなかった。
俺に話したい事があると言った。
「ここ、変じゃないですか?」
「ここって、何処?」
「このマンションなんですけど……」
意味不明だ。

そう思った俺の心が読めたのか、彼は自分の腕を差し出して話を続けた。
「見てくださいよ」
Tシャツ姿の彼の腕には、まるで誰かが引っかいたような傷があった。
彼は話し続けた。
部屋の中で起こる不思議な出来事を。
物音がしたり、話し声が聞こえたりという、幽霊話の類だ。
俺には霊感などというものは無かったし、幽霊も信じてはいなかった。
適当にあしらって、出かけたかった。
「気のせいでしょうね。疲れとか環境の変化とか」
「これも見てください」
そう言って彼はジーンズの裾を持ち上げ、足首を見せた。

659: 掴む話 2/2 03/09/21 21:42
そこには大男ががっちり掴んだような跡が残っていた。
「掴むんですよ」
「誰が?」
「分かりません。トイレから出ようとした時に、いきなりコレです」
「……?」
「床や壁から腕が生えてきて掴むんです。本当です」

普通は信じないだろう。
俺も信じられなかった。
ただ、精神的に参っている様子で、その日から彼は友人のアパートに居候を決め込み、翌月末にマンションを引き払うまで戻って来る事はなかった。
この出来事を切っ掛けに色々考えてみると、確かに不思議な体験をしていることを思い出した。
夜中に誰かに揺り起こされたり、深夜の廊下を子供らしき足音が喚声を上げならが走り回っていたり。
その時は夢や幻覚の仕業と片付け、気に留めてはいなかったのだが。

そんな俺も結局は、あのマンションを出た。
理由は掴まれたからだ。
あの日、夜中に目が覚めた。
眠れそうになかったので、翌日の仕事の準備でもしようと起き出して、テーブルに書類を広げた。
小一時間経ったころ、トイレに行こうと狭い廊下を歩いていた俺は、誰かに声を掛けられた。
「ねえ……」
びくっとして動けなくなった俺の背後から、青白いくて細い手が、すーと伸びてきて肩を掴んだ。
それは、ほんの数秒で消えた。
あれは幻覚だったと思いたいが、時々ふと掴まれた肩の感触を思い出す。

634: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 20:13
これは中学2年の時の話。
俺たちのクラスは出し物を決める時期が遅く、文化祭の前日になっても完全に準備を終えていなかった。
そこで仕方なく、話のわかる若い英語の先生に頼み、夜学校の戸締まりが終わった後で、一階トイレの窓だけ鍵を開けておいてくれるように頼んだ。

明け方そこから進入し、本番までの間に最終準備を済ませてしまう計画だったのだ。
正式な集合時間は5時だったが、俺は自分の仕事が大分残っていたので、幾人かの友達と3時に教室で会うように約束していた。
しかし、俺は2時半少し前には学校に到着した。
校舎を見上げると灯りが点いていなかったので、俺が一番乗りなのがわかった。
俺は予定通りトイレの窓から侵入した。

続く

636: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 20:14
校舎の中は灯りが無く暗かったが、月明かりでほんのり照らされ、案外周りがよく見えた。
懐中電灯は持っていなかったが、特に不便は感じなかった。
俺は階段を静かに上がった。
そして2階廊下の端に立ったとき、廊下の向こうに何かあるのが月明かりで見えた。

・・・人?
その人は頭をこちら側に向け、うつ伏せに倒れていた。
白いワイシャツ。
右手は胴に揃え、左手はこちらに向かって差し出されてはいたが、力無く廊下に投げ出されていた。
肩幅などから男であることはすぐにわかった。
顔は床に突っ伏しているため見えなかったが、髪型の雰囲気から、俺には鍵を開けておくよう頼んだ英語の先生に思えた。

何があったのだろうか。
俺は助け起こそうと思い、先生へ向かい小走りに駆けた。
しかし数歩、走ったところで立ち止まった。
なにか違和感があったのだ。
なんだろう。
俺は目を細めた。

続く

637: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 20:16
すると確実ではないが、何がおかしいのかおぼろげながらわかった。
細部がどうもハッキリとしないのだ。
なんというか、不思議と現実感に乏しかった。
そして窓枠の影。
月明かりで廊下には、窓枠が順次影を落としていたのだが、ワイシャツの上にあるべき影が無かった。
それが違和感の原因だったのだ。

そして俺は気が付いた。
先生はゆっくり動いている。
それは窓枠の影でわかった。
手の先にある影が、ゆっくりと体の方へ移動していた。
もちろん窓が動いているわけではない。
先生がこちらへ向かって移動しているのだ。
しかし手も足も動いてはいなかった。
ゆっくりと、そのままの姿勢でこちらへすべって来るのだ。
俺は急激に怖くなり、脇にある他の教室へ飛び込むと、音の立たないように扉を閉めた。

今考えると、なぜ後ろを向いて逃げなかったのかわからない。
薄暗い階段やトイレに戻るのが怖かったのかもしれない。
とにかく俺は、教室に入ってしまったのだ。
しかし灯りのスイッチは入れなかった。
灯りを点けると先生に見つかってしまうような、そんな気がしたからだった。

続く

639: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 20:18
数分たっただろうか?
俺は教室の真ん中あたりの席に座り、じっと息を殺していた。
先生が気になった。
廊下に面した窓は明かり取り用の上部に一列。
あとは前後の扉に各々。
ここから実際に見える景色は、前後の扉の窓から見える廊下だけだ。
それも高い位置にあるので、もちろん廊下の低い部分は見えない。
もう廊下を通り過ぎて行ってしまっただろうか?
確かめたいが、ドアから首を出して覗きたくはなかった。
また少し時間が流れた。

しかし気になる。
俺は相手が消えてしまっていることを願い、確かめたかった。
状況がわからないのは不安でしょうがない。
俺は意を決して確かめることにした。
ドアの脇に身を寄せ、窓から斜めに覗けば少し見えるかもしれない。
俺はそっと席を立ち上がった。
その時目の隅、床の上に何かが映った。

そこには先生がいた。
今まで机の影になって見えなかったが、先生はすでに教室に入っていたのだ。
ドアは閉まっているままだった。
そして教室の後ろ、ロッカーの前の床を先生はゆっくりと移動していた。
先程とまったく同じ姿勢で、ベランダの方向へ向かい、少しずつ動いていた。
そして間近に見て初めてわかった。
それは英語の先生ではなかった。

続く

668: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 22:11
続き
相変わらずうつ伏せの顔は、黒くモヤがかかりハッキリしなかったが、横顔の雰囲気から英語の先生でないことは確かだった。
白い半袖のワイシャツ。
左手は前方に、右手は胴の横。
しかし右手首から肘にかけては、変な方向へ微妙に曲がり、折れた骨が皮膚を内側から押した形に少し盛り上がっていた。
足は真っ直ぐ伸びておかしな所は無かったが、なぜか裸足だった。
俺には気づいていないのだろうか。
ゆっくりと動き続けていた。

こうなるともう我慢など出来るものではない。
俺は前方の扉へ走り、一目散に廊下へ逃げ出した。
結局俺は校門で友達を待った。
不思議なもので、アレは怖いが、文化祭の準備も気になって帰れなかったのだ。
しばらくして友達が二人来た。
そして朝日が昇り、皆があつまると恐怖感は薄らいだ。
しかし、先程の経験をすぐに話すことは出来なかった。
口に出すとまた恐怖がよみがえりそうな気がしたからだ。
もちろん英語の先生は生きていた。

続く

670: LL COOL J太郎 03/09/21 22:16
後日、国語の先生から、学校の裏側に立っている会社の寮で、数年前飛び降りがあったという話を聞いた。
アレはその時の会社員だったのだろうか。
なぜその人の幽霊が、道を挟んだこちらの学校に出ているのか。
なぜ廊下からベランダへゆっくり向かうのか。
本当のところは何もわからなかった。

終わり。

673: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/09/21 22:22
素直に面白かった・・・・(゚д゚;)

927: 1/5 03/09/24 18:23
前月に学校を辞めたゼミの先輩が残していった荷物がある、という話は久保から聞いた。
ほとんど使われていない埃っぽい実験準備室の隅っこに置かれた更衣ロッカーの中。
汚れたつなぎや新品同様の工具などと一緒に、ビデオテープの入った段ボールがあった。
ラベルから、大半は実習のビデオやテレビの録画だということが分かる。
ただ、中に何本かラベルの貼ってないテープがあった。
当時ビデオテープは貴重品だったので、当たり障りのないヤツは貰ってしまおう。
そう考えて、久保と2人でラベルのないテープをチェックする事にした。

夜の10時頃、他のメンバーは帰宅しており、研究室には私と久保の二人だけだった。
デッキにテープの最初の一本を挿入する。
「呪いのビデオだったりしてな」
などと笑いながら再生ボタンを押した。
いきなり人の顔が大映しになった。
暗闇に月のように浮かんだ真っ白な顔。
思わず息を飲む。
日本人形だった。
正面からの至近距離で少しブレている。
口元が笑っているように見えた。

「暗いな」
久保がモニターの明度を上げると、背景にほんのり格子模様が浮かび上がった。
「障子か?」
どうやら和室で撮影されたもののようだ。
電灯のような影も見える。
画面に動きがないので静止画像かとも思ったが、デッキのカウンターは秒を刻んでいる。
「おい、何か聞こえないか?」
久保が言った。
音量を上げてみる。
ちりん…ち…んちりん…
金属片の触れあうような音が微かに聞こえてきた。
「気持ちワリぃな」
そう言って久保は早送りに切り替えた。
人形にも部屋の様子にも何ら変化は見られない。
「もうイイだろ。止めようぜ」
私は停止ボタンを押した。
一瞬、画面が揺らいで暗転した。
頭の中には人形の白い顔が残像のように浮かんでいる。
なんだか嫌な気分だった。

928: 2/5 03/09/24 18:24
それから2時間ほどかけて残りのテープを見たが、テレビ番組の録画ばかりだった。
私と久保はテープを山分けして、部屋を後にした。
人形のテープは廊下の段ボールに戻す。
駐輪場へ向かう途中、久保がボソ…という感じで呟いた。

「俺、あの人形のヤツどっかで見たことあるような気がするんだけど、何でかなぁ…」

心中を見透かされたようだった。
私もそれが気になっていたのだ。
闇に佇む白い人形の顔。
金属が擦れるような音。
ずっと昔に見聞きした記憶…
久保と私の故郷は数百キロ離れている。
だから、その記憶が同一の体験を基にしたものでないのは明らかだ。
だから、「テレビで見たんじゃないか?」と答えた。
何の根拠もなかったが、それぐらいしか考えられなかった。
校門の所で久保のバイクのリアランプを見送った後、私は自転車でアパートに戻った。

929: 3/5 03/09/24 18:25
暗い部屋の中に私は立ち竦んでいる。
懐かしいと同時にとても不安な心持ちで。
どこからか、ちりん…ちりん…と音が響く。
風鈴のような、モビールのような音。
気が付くと、目の前に日本人形があった。
微笑みを浮かべ、暗闇に佇んでいる。
理由は分からないが、この人形は生きている、という確信めいたものがあった。
りん…ちりん…音は微かに、しかし止むことなく鳴り続ける。
人形は徐々に近づいてくるようだった。
自分が動いているのか、人形が動いているのか、もはや区別がつかない。
白い顔が視界を覆い始める。
もう距離が近すぎてピントが合わないけれど、その表情は微笑みをたたえたまま、何の変化もない。
顔は、ただひたすらに近づいてくる。
私の顔に触れんばかりに、ゆっくりと…すんでのところで悲鳴を飲み込み、私は目を醒ました。

胸がドキドキしている。
パジャマは寝汗でびっしょりだった。
時計を見ると明け方の4時。
のろのろと布団から這い出して隣の部屋へ。
電気を点ける。
座椅子に座り、あらためて夢の内容を思い出そうとした。
が、途中で切れている。
迫り来る人形の顔。
その先に酷く怖ろしい出来事があったがはずなのに、時間の経過と共に夢の記憶は散り散りに、結末は忘却の彼方へ。
それでも、久保と二人で見たビデオの情景に酷似した夢であったことは憶えていて、眠気が追い払われるにはそれで充分だった。
喉がカラカラに渇いていたので、台所の蛇口から水を飲み、ついでに顔も洗った。
ふと、辺りにお香のような匂いが漂っていることに気が付いた。
ここで香を焚いたことなどないのに…
そう思った矢先、私はあることを思い出した。

930: 4/5 03/09/24 18:26
私には以前これと全く同じ夢を見た記憶がある。
暗闇に佇む自分。
金属質の音。
近づいてくる人形…
一人で寝ていたのだから、たぶん小学生の頃だと思う。
怖くて、別の部屋で寝ていた母親の布団に潜り込んだのを憶えている。
そしてその時も、辺りにはお香の匂いが漂っていた。

その匂いがきっかけとなって、私の記憶は呼び覚まされたのだった。
回想のさなかに電話が鳴った。
一瞬ビクッとしたが、出てみると久保からだった。
「実は俺、いま夢を見たんだけど…」
久保も同じ夢を見ていた。
ビデオとそっくりの夢。
人形の夢。
「それで思い出したんだけど、昔これと同じ夢を見てるんだよ…」
久保も私と同じ理由から怯えていた。

とにかく部屋から離れたかったので、私は久保に近くの深夜喫茶の名前を告げ、そこで話をすることにして電話を切った。
着替えの最中、敷いてある布団の方から視線を感じるような気がした。
ゆっくりと視線を動かすと、布団の足元のところが丁度猫位の大きさに膨らんでいて、そこの部分の端の所が少し持ち上がっていた。
まるで、布団の中から何物かが覗いているように見える。
震える手で着替えを済ますと、靴を履くのももどかしく、ドアを開けて外に出た。

931: 5/5 03/09/24 18:28
喫茶店で待ち続けたが、久保はなかなか現れなかった。
心配だったが、部屋に行く勇気はなかなか湧いてこない。
やがて夜が明け、辺りがすっかり明るくなってから、私は店を出て、久保の住むアパートに向かって自転車を漕いだ。

途中、橋のたもとに人が集まっているのが見えた。
嫌な予感がした。
パトカーが2台停車していて、警官が交通整理をしている。
2台のパトカーの間、橋の欄干の脇に久保のバイクが見えた。
目撃者によると、久保は欄干を乗り越えて川に飛び込んだらしい。

つまり、事故ではない。
バイクは車道脇に停められていた。
なぜ、そんなところから飛び降りたのか、理由は誰にも分からなかった。
自殺の意志があったのかも分からずじまい。
久保の死体は500m下流で揚がった。
もちろん遺書はなかった。
はっきりとした動機も。

私は一旦実家に戻り、アパートは引き払った。
友達やゼミの教官に人形の話はしなかった。
妙な噂を立てたくなかったからだ。
例のビデオテープは処分しようかとも思ったけれど、祟られるのも嫌だったので、誰にも見つからないような所へ隠した。

以来十数年、あの夢は見ていない。
ただ、起きると香の匂いが立ちこめていることはある。
特に何かがあるわけではないけれど、ちょっと気味が悪い。

元スレ:https://hobby4.5ch.net/test/read.cgi/occult/1063581506/